戸建投資からはじめて、一棟RCマンション投資へ移行した理由や、銀行数が少ないエリアでの融資付けの工夫などをおうかがいしました。
■ 過酷なサラリーマン生活のなか、家族との時間を作りたいという想い
華子
自己紹介をお願いします。
もっちーさん
佐賀県在住のもっちーです。現在、46歳、大家のほかにトランクルームやレンタルスペース、レンタルオフィス、太陽光発電所、車屋やコインランドリー事業、障害者の方への住宅提供サービス他なども行っています。
華子
不動産投資を始めたのはいつからですか?
もっちーさん
2010年、33歳の時です。一棟目は貯金200万円で戸建を競売で購入しました。この13年間に累積400室くらい買っています。売却もしていて、小さいものから大きいものまで現在28棟320室所有しています。
華子
中古が中心ですか?新築が中心ですか?
もっちーさん
多いのは中古です。一棟RCマンションは全部中古で、耐用年数を超えていないものに特化して購入しています。新築は戸建6戸と新築の小ぶりのアパートで、合計35室あります。物件のタイプはファミリーが半分くらいです。
華子
家賃収入はどのくらいですか?
もっちーさん
年間約3億円で借入は30億近くあります。利回りの平均は新築が9~9.5%で、中古は10%程度。全体の返済比率は約45%です。この数字は物件の入れ替えが進んだ現在のものです。昔は利回りや返済比率が大事でしたが、今は立地を重視して選んでいるため、利回りが下がっています。
華子
不動産投資を知ったきっかけは?
もっちーさん
ブックオフで国房啓一郎さんの『ど素人がはじめる不動産投資の本』 (翔泳社)という書籍を見つけて読んだのがきっかけです。その本にロバート・キヨサキが載っていたので、すぐに『金持ち父さん貧乏父さん』(筑摩書房)も買って読みました。
華子
なぜ、不動産投資の本を手に取ったのでしょう。
もっちーさん
当時、車のディーラーをしていました。毎日が忙しくて分刻みのスケジュールです。楽しみは休日に家族と過ごすことでしたが、それもままならない。とにかく生活を変えたいと思っていました。そんなときにブックオフでたまたまこの本が目に留まりました。
それまで漫画しか読んだことがなかったので、活字を読むのは大変でしたが、何日もかけて読み終えました。その後で買ったロバキヨも何度も読みました。その後はネットで「不動産投資」と検索して、興味のあるものを読んでいきました。
■競売の戸建を現金購入して不動産投資をスタート!
華子
本を読んだ後、どのような行動を?
もっちーさん
競売に挑戦しました。ヤフオクでお金を稼いで競売で不動産を購入していく竹内かなとさんの手法を知って、これならできるんじゃないかと、199万9,999円で入札したところ、無事に1つ目の戸建を買えたんです。
竹内さんは当時まだ本を出されていなくて、ブログで情報発信されていました。この頃から私もブログを書き始めました。
華子
199万円で落札したのは空家ですか?
もっちーさん
いえ、人が住んでいました。実は、買ってから気づいたんですが、接道がない囲繞地(いにょうち)と呼ばれる再建築不可の物件で、初心者が買うような物件ではありませんでした。
どうやら親御さんが後に買い戻す予定だったところ、ど素人の私がわけもわからずに入札したわけです。入居中のご家族にはそのまま3年半くらい住んでもらいました。
華子
結果的にはうまく運営できたのですね。大家さんになった感想は?
もっちーさん
毎月、家賃が5万円ずつ振り込まれる通帳を見て、「これが大家なんだ!」と実感しました。嫁さんも初めのころは「他人の住む家に、なぜお金出さないといけないの?」と、反対していたのですが、実際に貯金が5万、10万、15万と自動的に積み上がっていくのを見て興味を示すようになりました。
華子
実績を見せるのが大切なのですね。その後、買い進めるのですか?
もっちーさん
はい、1つ100万円程度の戸建を続けて5戸購入しました。当時の佐賀では100万円もあれば、土地付きの古い家が買えたのです。とはいえ現金がそんなにあるわけではありません。とにかくお金を捻出するため、毎月のコストを絞りました。
携帯電話、保険……嫁さんにも頼んでいらないものを売りました。さらには古物商の許可を取り、個人事業主として自動車を扱うサイドビジネスをしたり、弟に協力してもらったりして、とにかくお金をつくることに専念していましたね。
■投資スピードを重視してRC一棟投資に挑戦するも惨敗
華子
戸建ての次はどんな作戦をとったのですか?
もっちーさん
現金で5戸買ってから、お金の増えるスピードが遅いことに気づきました。このままのやり方では現金が追いつかないですし、会社もリタイヤできません。スピードアップするためにも融資を使った投資に切り替えることにしました。
華子
融資を使ってレバレッジをかけようと考えたのですね。
もっちーさん
はい。その頃、今田信宏さんの提唱する光速投資法を知りました。その後、今田さんの門下生である三宅耕二さんの書いた『頭金ゼロではじめる「高速」収益不動産投資成功法 実践編』(ぱる出版)を読んでセミナーに参加して、直接話す機会を得ました。
本を読んで知ったんですが、三宅さんももともとは車のディーラーだったので、同じ仕事なら同じ融資が使えるだろうと考えました。実際、三宅さんからの学びは、私にとって非常にいい影響がありました。
華子
では、そこから融資を使った投資に方向転換を?
もっちーさん
ところが、そんなに簡単にはいきませんでした。というのも銀行融資にはエリアの壁があるじゃないですか。佐賀は銀行が少なくて、当時の私が使える銀行は、スルガ銀行だけでした。ところが、初めての融資に挑戦した結果、まさかのスルガの審査に落ちてしまったのです。
華子
当時のスルガ銀行といえば融資に積極的なイメージですが、何が原因だったのでしょう?
もっちーさん
理由は私の源泉徴収票にありました。そもそも車のディーラーというのは1台売って7,000円、10台売って7万円という世界です。若いころはお金より名誉だと思って、トップセールスマンとして頑張ってきました。月平均15~20台、多いときは1日に3~4台を売って年間表彰をされていたくらいです。
華子
会社員としては非常に優秀で順調ですよね?
もっちーさん
はい、会社員としては超優秀です(笑)お金より名誉にこだわる会社にとって本当に都合のよい人材だったと思います。ところが融資を申し込む際に、3期分の源泉徴収を並べてみたら、直近の収入が前年より100万円も下がっていたのです。
華子
営業成績がいいのに……。それは、なぜでしょうか?
もっちーさん
不動産投資をはじめる前の年に、会社が合併していまして……。合併の際に、低い方の給料に統一されたようなのです。成果報酬もあるため、給料が減っていることに気づきませんでした。
当時、ディーラーとして一番売っていた時期なのに、こんなに減給されたいたなんて、すごいショックでした。しかも、初めて融資を使って1億円のアパートに挑戦しようとしたら、頼みのスルガ銀行からNGをくらってしまったんですから。
華子
1億円の物件はどんな物件だったのですか?
もっちー
北九州にある利回り16%の物件です。駅まで歩いたり、近くの不動産屋にいってヒアリングしたり、初めての1億円の物件ということで念入りに調査をしました。今振り返っても惜しい物件です。
売主さんにも気に入っていただけたのに、ハシゴを外されて本当にショックでした。佐賀銀行にも何度も当たりましたし、高校のときの先輩などいろんなツテも使いました。北九州の銀行にも飛び込みで行くなど、目につく銀行は全部まわりましたが、どこも門前払いでした。
華子
結局、どこからも融資を受けられなかったのですか?
もっちーさん
はい。何カ月もかけて取り組んだのですが借りることができませんでした。そのときに、「銀行にこっちからいくんじゃなくて、向こうからこさせるようにしよう!」と強く思いましたね。
■融資の勉強をして、中古RCマンションを続けて購入
華子
なるほど。融資の壁に跳ね返された後は、どうしたのですか?
もっちーさん
そこから1年間は停滞しました。佐賀だけでなく福岡、岡山、山口などにエリアを広げてみても買えません。物件紹介があるたびに買付を入れるのですが、ダメでした。
そんな時に、福岡で4,000万円くらいの物件が出ました。中古のRCで利回りは15%。1年間、しっかり準備をしていたので、今度は買うことができました。
華子
良かったですね!ちなみに買うための準備とは?
もっちーさん
融資について、徹底的に勉強しました。例えば嫁さんと一緒に1回5万円の東京と大阪のセミナーに参加しました。新幹線と宿代を合わせて、20~30万円かかります。今考えたら安いものですが、当時は高く感じましたね。学ぶことで知識がついて、やり方がわかるようになりました。
華子
知識をつけることで、融資の受け方を自分のものにしたのですね。
もっちーさん
はい。おかげで福岡の4,000万円のRC物件を、今度こそスルガ銀行で借りることができました。個人名義です。高利回りでしたが、1Kの物件で入居率が悪かったので、購入後は嫁さんが手伝ってくれて一緒にDIYをしました。
嫁さんは専業主婦でしたが、初期に買った戸建のDIYを一緒にした経験があったのです。地元の唐津から物件のある福岡の城南まで通ってくれました。苦労をかけました。
華子
次の物件も融資を使って買われたのですか?
もっちーさん
はい、RCの2棟目は福岡の大牟田にある4,500万円で利回り13%の物件です。こちらは法人での購入でした。エリアの壁があり簡単ではなかったですが、地元の地銀の担当さんが熱い人で、実績がないサラリーマンが借りるなんてありえないところ、なんとか稟議を通してくださいました。
この2物件のおかげで売上が伸びました。その後もあえて節税をせずに不動産収入を増やしたところ、どんどん買えるようになりました。
当時はクレジットカードのキャッシングを暫定的に使うなど、資金繰りのための裏技を自己流で相当研究しました。ぎりぎりの橋を渡ったこともあります。ある程度、お金を増やすまでは未来のための苦労をしました。
編集後記
競売で戸建を買うスタイルから、投資スピードを追求するため、融資を使ったRC投資にシフトチェンジした、もっちーさん。苦労しながらも融資の扉を開き、その後は買い進められるようになったそうです。ちなみに1棟目のRCマンションで懲りたのか、所有する物件は単身向けでなくファミリー向けを買いたいとのこと。続きの後編は明日の16時公開予定です。(担当F)