現在手掛けている大型の高層RC物件が、今月末に10階のコンクリートを打設して上棟します。1年以上をかけてようやくここまで来ました。
これから来年3月末の竣工へ向けて、什器設備搬入と内装作業に移っていきます。来年の1月からは2階を賃貸募集用のモデルルームとして公開予定です。
この案件は昨年末に土地を購入し、今年の3月に雪解け前から着工したものです。土地の売主さんはオイラと同い年の投資会社の社長さんですが、当初はここに自社物件を建設予定だったそうです。
しかし、事業収支が8%程度の賃貸マンションでは投資効率が悪いと、土地として売却に出したのです。すると本州のファンド系から買付が入り、10%の手付金を支払い契約までしたのですが、資金繰りがうまくいかず、話は流れました。
そこで再度、売却に出たところを、タイミングよくオイラが購入したというわけです。売主様は既に前の買主候補の手付金で10%の利益分を確保していたので、オイラも合意できる金額で売却をしてくれたのでした。
オイラが買い付けを入れた後で分譲マンション業者から若干高い金額で買いつけが入ったそうです。しかし、売主様は買いつけの順番を守ってくれて、オイラが購入することができたというわけです。
また、売主様は当初200坪の土地を購入し、その後で近隣を地上げして430坪まで大きくしたとのこと。おかげで今回、430坪の敷地に10階建てで1フロア9戸×9フロア、合計81戸の賃貸マンションを建てられることになりました。ちょっとした分譲マンション規模だと思います( 笑 )
付け加えると、この規模の物件は最初から作れるものではありません。オイラは新築高層RCマンションは7棟目です。新築の低層RCも18棟、木造の新築も3棟を経験しました。この積み重ねがあったからできたのです。
■ 新築マンションを建てるときの流れ
大まかな流れを説明すると、立地から入居者層をイメージし、設計の先生と間取りや仕様のすり合わせを行い、図面が出来上がったら建築会社を選定、予算を立てつつ銀行と融資に向けたタフな交渉を行い、一つのプロジェクトとして成立させていきます。
オイラが主導して企画する際には、土地情報をもらった時点で建蔽容積率を見て概算で建築ボリュームを出します。それに建築単価をかけて概算で建築金額を算出し、さらに貸付面積から概算年間家賃を導きます。
そしてざっくりと8%程度の利回りが出そうだと判断したら、次に設計の先生に希望の間取りやどんな入居者が入りそうかなどのイメージを伝え、ブロック図を起こしてもらいます。
ここでは設計の先生に間取りの手直しを何度も依頼し、一番良い形に収まるようにしていきます。この場合の一番良い形とは、別の言葉に置き換えると「 希望と現実の妥協点を探す 」という意味になります。
例えば、全部屋角部屋で全部屋水回りは隣りあわせなどと希望を言っても、物理的に無理なものは無理なのです。全部屋日当たりが良いほうがいいに決まっていますが、それも無理。あとは部屋の条件と家賃でバランスさせるしかないのです。
夜帰宅して朝早くに出勤するから日当たりより家賃の安さが大切と考える人もいます。日中家にいることが多いので、家賃が高くても日当たり最優先という人もいます。価値観は様々なので、一棟物の運営が成り立ちます。
■ 高層にするか、低層にするかの判断基準
出来上がった図面に何度か手を入れてもらった結果、2階から10階まで共通で、1フロアに3LDKが2戸、2LDKが4戸、1LDKが3戸という間取りに決まりました。広さも74平米( 3LDK )から36平米( 1LDK )まで幅があります。
過去には単身専門の物件、ファミリー専門の物件も建てたことがありますが、今回の立地は単身・ファミリーどちらもニーズがあると判断した為に出来たバランス優先の間取りです。
ファミリーの間取り比率が高めですが、これはこの土地が近隣商業地( 容積率80%・建蔽率300% )で10階建を建てると使う建蔽率が小さくなり、敷地に余裕が出来て駐車場を35台分確保できると見込まれた為です。
もしこれが別の土地で、立地や道路付けの関係で道路斜線、日影規制、建築予算や利回りの観点から「 高層は無理だ 」と判断された場合、建築費が高層に比べて割安な4階や5階建てを考える事になります。
その際には容積率を消化する為に建蔽率いっぱいに建物を建てます。すると敷地に余裕がなくなり、駐車場の台数も減るため、車が不要な単身者向けの物件の企画を考えていきます。
もちろん、単身者向けの物件を建てるなら、そのエリアに単身者のニーズがあるのかという点も重要です。そのマーケティングの結果が、その案件をやるかやらないのか判断につながるのです。
今回は高層で、居住区は2階から上です。この場合、セキュリティの観点から一般的に不人気の1階の部屋を作らずに済みます。容積不算入の1階には24時間ゴミを出せるゴミ庫や100台近くがとめられる屋根付き自転車置き場を作ることが出来ました。
加えて雪国では人気の「 屋根付きピロティ内駐車場 」も8台確保でき、トータルでバランスのいいものができたと考えています。これも力のある設計士のA先生のおかげです。
■ 思いを持ち続けると、目標はいつかは達成できる
ちょっとした分譲マンション規模となった為に、総事業費は15億以上にもなりました。考えてみれば、1億5千万で10戸入りのマンションを10棟ほどまとめたようなものです。新築をされた経験がある方は想像できると思います。
10年前のオイラを思い返すと、今の姿は夢の延長上にはあったものの、現実的には想像すらできませんでした。しかし、その布陣としては15年以上前に、投資家の友人とお酒を飲んで気が大きくなった際に次のようことを話していました。
「 将来オイラは30階建タワー型賃貸マンションを新築して、その最上階に住んでやるぞ!! 」
夢物語で語った事が、それから15年後、今から2年前に近い形で実現しました。実際には30階ではなく14階建と若干低かったのですが、74世帯の大型物件を建設して、最上階にオーナールームと事務所を持つことが出来ました。
回りくどい話で申し訳ないのですが、「 思いを持ち続けると、目標は結果規模の大小は問わずにいつかは達成できる 」という事をお伝えしたいと思って書いています。
これは、オイラの盟友のチョビーが言うところの「 目標は2倍の大きさで丁度良い 」という事の証左ともいえる出来事だと思います。さらにオイラが付け加えるなら、「 目標は10倍の大風呂敷を広げるぐらいで丁度良い 」となるかと思います。
そして、その74世帯の物件建設の経験を経て、その延長線上にある今回の81世帯の大型案件に繋がったわけです。中古の木造アパートから始めて、一つ一つ、積み上げてきました。
過去にやってきた中古物件も新築物件もその時点では点でしかありませんが、ジョブスが言うように「 その点を繋いでいくこと 」で大きな形になったといえます。未来に向けて大きく考えることは悪くないと思います。