7月3日に国土交通省、厚生労働省、法務省の3省が「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等の在り方に関する検討会」の初会合を開き、高齢者やひとり親などへの入居支援を国が拡充する計画であることを健美家ニュースでも取り上げた。この記事はよく読まれており高齢の入居者への関心が高いことが伺える。
そこで高齢者専門の賃貸を扱う株式会社R65不動産 代表の山本 遼氏を取材し、上記の検討会の注目点や、高齢者世帯に部屋を貸す際の注意点など健美家読者に向け、アドバイスをもらった。
使われてない空き家や公営住宅を活用し自治体や
不動産業者らとの連携を強化、入居しやすい環境へ
7月に発表された、国の住宅確保要配慮者に対する支援拡充の方向性(下図)を見ると、使われていない空き家や公営住宅を活用し、自治体との連携を強めるなど、一見すると目新しい取り組みはないようにも見える。
しかし4項目目に、大家が安心して貸せる環境整備のあり方として、孤独死や残置物処理等の負担を軽減することや緊急連絡先の確保や家賃債務保証を利用しやすくすることについて触れられており、こうした配慮が今後進んでいくことは大家にとってありがたいように思える。
上記の検討内容を見て、現場をよく知るお立場からどうお感じになられたのだろう?
「今までは不動産業界のなかでこうした話題が多かったのですが、それが一般化してきた感触で、全体的に希望が持てる内容です。行政関係者からのヒアリング依頼をいただくことも頻繁にあるのですが、高齢者向け賃貸の実態が伝わればよいと思っています」
健美家ニュースでは、2016年のR65不動産のスタート時から度々高齢者向け賃貸の実情について取材し、記事にしてきた。コロナ禍では、R65不動産に掲載されている物件の件数が倍になったことを記事にしたが、今現在の反響はどうだろう?
「高齢者向け賃貸の募集件数は賃貸市場の繁忙期になるとぐっと増え、閑散期に減る傾向があり、時期的に多い時と少ない時があるもの、提携する全国の不動産会社や賃貸オーナーの数が増え、高齢者からの反響は年々増えており、需要の高さを実感しています」
R65の利用者は65歳以上と幅広く、年齢も家賃帯もエリアも利用者はさまざまだ。全国平均にして、家賃 3~5万の賃貸住宅のニーズが中心だが、時折、高額な賃貸住宅への入居希望もある。
性別は意外にも 7:3の割合で女性が男性より多い。これは平均寿命が女性のほうが高いことが関連しており、夫と死別後も女性一人で暮らしているケースが多いそうだ。
「近年ではアパートの老朽化から立て替えのための立ち退きで部屋探しをしている人も多いですね。エリアには、人口の多い首都圏や都市部の利用者が多いです。
最近では大阪、福岡などの地方都市で検索数も多いのですが、当社は東京の会社で、地方都市の不動産会社との接点が少なく、物件が載っていないエリアもあり、エリアを拡大していくのが課題です」
ECHOESと提携し、より広いエリアをカバー
大家自らサイト上に物件情報を掲載でき、反響を確認できる
R65では大家自ら物件サイトに自分の物件情報を掲載できる「ECHOES」を展開するSIREと業務提携した。ECOHOSでは賃貸オーナー自ら、スーモやアットホームなどの賃貸募集サイトに物件募集の情報を掲載することができるが、業務提携によりR65にも同じく賃貸物件の募集をオーナー自らアップでき、サイトの更新や掲載がスムーズになる。
ECHOESとの提携によって「高齢者向け賃貸では、戸建てを希望している人が多い」ことがわかったそうだ。これまで不動産会社を通して、戸建の管理は戸数が少ない割に手間がかかると嫌がられる傾向にあり、戸建の掲載件数が少なかったが、ECHOESを利用する賃貸オーナーは、戸建を高齢者向けに貸し出すケースも多いようだ。もしも戸建投資を行い、入居者を探す場合はR65で募集してみてもいいかもしれない。
では実際に高齢者に賃貸住宅を貸すうえで、どんなことに注意すべきだろうか? 過去に見守りサービスや保険で備えることが重要であると過去記事で紹介しているが・・・。
「R65不動産を8年続けるなかで、認知症についてよく耳にするようになりました。件数が少なくても何かあれば、悪いイメージを持つ人が増えるものです。
あらかじめそうした事態に備えて、地域包括支援センターなどとの連携を強め、大家さんが見守りサービスや孤独死があった際などに利用できる保険で備えておくことが重要です」
一般賃貸では、家賃の滞納に備えて家賃保証会社を利用することが一般的になっているが高齢者向け賃貸の場合はどうだろう?
「滞納は高齢者賃貸では少ないものの、何かあったときや亡くなられた後のことも考えて身寄りがない高齢者の場合は家賃保証会社を利用することを勧めています。
最近当社で仲介した入居者は、6ヶ所の不動産会社を回っても部屋がみつからず諦めかけていたのですが、当社ではその日に担当者が部屋を見つけ、数日後に契約に至りました。
今までは空室を埋めるために高齢者にも部屋を貸そうという流れが少なからずあったのですが、今回の検討会を契機に、高齢者に対して賃貸住宅の門戸が広がるとよいと思っています」