国税庁は7月3日、相続税や贈与税の算定基準となる土地の路線価(2023年1月1日時点)を公表した。標準宅地の評価基準額は全国平均1.5%上昇し、2年連続で上昇した。全国の平均は前年の0.5%上昇よりも上げ幅を拡大。新型コロナウイルス感染拡大の影響から脱して商業地を中心に盛り返している様子が窺える。
最高路線価が上昇した都市は29都市、横ばいは13都市、下落は4都市となった。ポストコロナを見据えた社会経済活動の正常化の動きが色濃く反映された。急速に回復するインバウンド(訪日外国人旅行客)需要で百貨店大手がコロナ前の売り上げ水準に戻しているほか、主要な観光地や繁華街も回復傾向を強めている。
新型コロナウイルスからの回復顕著に
全国で路線価が最も高かったのは「東京都中央区銀座5丁目」(鳩居堂前)で1㎡当たり4272万円(前年比1.1%上昇)で、38年連続で最高となった。ちなみに過去の全国最高額は2020年の4592万円である。
鳩居堂前に続く全国2位の価額は大阪・御堂筋の1920万円(同1.3%上昇)、3位が横浜・横浜駅西口バスターミナル前通りで1680万円(同1.4%上昇)、4位が名古屋・名駅1丁目で1280万円(同2.6%上昇)、5位が福岡・天神2丁目で904万円(同2.7%上昇)だった。
変動率が最も上昇したのは岡山市北区本町市役所筋で前年比9.3%上昇(価格164万円)だった。2位が札幌市中央区の札幌停車場線通りで同8.4%上昇(同668万円)、3位がさいたま市の大宮駅西口駅前ロータリーで同8.0%上昇(同475万円)といずれも8%以上の上昇幅だった。これらの上昇地点は再開発事業で街のにぎわい創出への期待や新幹線延伸など交通利便性への期待が大きい。
上昇率が5%以上10%未満の都市は、札幌、さいたま、福井、奈良、岡山の5都市となり、昨年の1都市から増えた。
上昇率が5%未満の都市は、仙台、秋田、福島、宇都宮、新潟、東京、横浜、富山、金沢、岐阜、名古屋、大津、京都、大阪、神戸、広島、高松、松山、福岡、佐賀、長崎、大分、鹿児島、那覇の24都市となって昨年から10都市増えた。
国税が新たな相続税額の算定ルール発表
路線価は1月1日時点の標準価格で、主要な道路に面した土地1㎡当たりの評価。国土交通省が毎年春に発表する公示地価の8割を目安に国税庁が不動産の売買取引事例や不動産鑑定士の意見などを参考に算出する。
相続税などの申告で土地の時価を把握する算定基準の一つとするよう定めている。2023年の調査地点は全国約31万6000カ所となっている。
2022年4月に最高裁判決でタワーマンションなど不動産を購入することによる過度な節税を認めずに国税当局の追徴課税を適法と認めた。これを受けて今後の対応策を検討してきた国税庁は6月30日、有識者会議の意見をなどを踏まえてマンションで新たに導入する相続税額の算定ルールを発表した。
相続税価額が市場価格と乖離する要因となっている「築年数」、「総回数(総階数指数)」、「所在階」、「敷地持分狭小度」の4つの指数に基づいて評価額を補正する方向で整備する。
2024年1月適用を目指すもので、新たな算定ルールでは、戸建て住宅とのバランスも考慮して相続税評価額が市場価格理論値の60%未満(乖離率1.67倍超)になっているのについて60%(乖離率1.67倍)になるよう評価額を補正する。これを踏まえて同庁が通達案を作成して意見公募手続きを実施する予定だ。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))