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孤独死発生で最大450万円の原状回復費! 保険協会のレポートから見えた現状

調査(不動産投資)/その他 ニュース

2024/03/02 配信

「賃貸住宅に1人で暮らす人」の孤独死の現状を集計したレポートがある。

「孤独死保険」を扱う少額短期保険会社らが加入する一般社団法人日本少額短期保険協会が2015年4月から調査。孤独死の未然防止や早期発見につながればと、孤独死保険が支払われた事例を統計化したものだ。先ごろ2024年1月には最新の「第8回孤独死現状レポート」が発表された。

これらの調査結果から分かるのは孤独死が高齢者特有のものではなく、単身の40代、50代に多いという事実だ。孤独死の実像を知り大家が未然に取れる対策と投じるコストとのバランスを考えるきっかけになればと思う。

孤独死の平均年齢は61.9歳。60歳未満の死亡者が約4割を占める。死因別でみると20代女性の自殺割合が突出して高いという(写真はイメージ)
孤独死の平均年齢は61.9歳。60歳未満の死亡者が約4割を占める。死因別でみると20代女性の自殺割合が突出して高いという(写真はイメージ)

平均で約96万円の損害(残置物処理24万円、原状回復40万円、家賃保証33万円)

大家にとって最も気になるのはお金の話だろう。「孤独死保険」の支払い実績(2015年4月~2023年4月までの集計)をもとにした「孤独死発生に伴う損害額と支払い保険金額」(下表)から残置物処理・原状回復費・家賃保証の3項目を見ていく。

出典:一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会調査「第8回孤独死現状レポート」より(以下同)

残置物処理費用(表上)にかかる平均損害額は23万7,218円。これに対し平均支払保険金は23万6,196円。平均的な損害については保険でカバーできることが分かる。一方、残置物だけの処理に最大で178万円1,595円かかった事例もある。

特殊清掃などを含む原状回復費用(表中)の平均損害額は39万7,158円。これに対し平均支払保険金は31万2,098円と、平均的な汚損については保険である程度までカバーできていることが分かる。

一方で最大損害額の項目を見ると454万6,840万円と大規模なリフォーム工事レベルの金額事例も。この事例の間取りや家賃は分からないが「1人暮らしの人」として考えると、454万円の原状回復費に多くの大家はやりきれない思いであろう。

なお、大家向けの孤独死保険の原状回復費の補償限度額の最大は100~300万円ぐらいとしているケースが多い。

家賃保証(表下)の平均損害額は32万9,401円。家賃帯は地域ごとに異なることもあり、レポートでは参考として主要都府県での平均家賃を紹介している。

東京都5万6,100円、愛知県4万1,420円、大阪府4万1,043円。

レポート内の平均の家賃保証費32万9,401円は東京都の家賃でいえば約6か月分に相当する金額だ。

以前、身内の孤独死を経験した大家に話をお聞きしたが、孤独死が発見された段階で死後3週間は経過。その後警察でDNA鑑定を行い、遺体の引き取りや金品の返却までにさらに2か月を要したという。死亡推定日から3か月が経過していた。

発見までの日数にもよるが、警察による身元確認、相続人の有無、残置物の撤去、原状回復工事、募集、入居という流れを考えても数か月の家賃を逸失することになる。加入の保険でカバーできるかどうかは、孤独死を早期で発見できるかにかかってきそうだ。

ここまで見てきた「残置物処理」「原状回復」「家賃保証」の3項目の金額平均を足すと損害額は約96万円。1回の孤独死発生で100万円前後の出費が目安となりそうだ。

損害額は年々増加。約4年間で合計損害額は5万4,118円増加

出典:一般社団法人日本少額短期保険協会発表「第5回~第8回孤独死現状レポート」の「孤独死発生に伴う損害額と支払保険金額」をもとに筆者が作成
出典:一般社団法人日本少額短期保険協会発表「第5回~第8回孤独死現状レポート」の「孤独死発生に伴う損害額と支払保険金額」をもとに筆者が作成

なお、2020年11月発表の第5回レポートの孤独死発生に伴う平均の損害額と比較していくと合計の損害額は年々増加傾向にある。約4年間で平均の合計損害額は5万4,118円増加。背景には物価高などが考えられそうだ。今後も費用負担は増加するものと考え大家としては備えたい。

孤独死の平均年齢は61.9歳。60歳未満の死亡者が約4割を占める

「賃貸住宅に1人で暮らす人」の孤独死と聞くと高齢者が人知れず亡くなるイメージを持つかもしれないが、意外にも孤独死の平均年齢は61.9歳との調査結果だ(下表)。さらに男女ともに38.4%の人は60歳未満で死を迎えている。

孤独死者の死亡原因は病死6割。自殺1割弱、うち20代女性の自殺割合が3.6割と突出

孤独死の原因には病死、自殺や他殺、火事などの事故死など様々ある。病死は早期発見できれば損害を最小限に抑えることができるが、やっかいなのは見守りサービスなどの導入が難しい現役世代の自殺かもしれない。

「孤独死者の死亡原因①」(下図)を見ていくと8,695件の分母に対し、病死は5,495件で63.2%と6割を超える。続いて自殺が816件で9.4%を占めているのが分かる。

死亡原因

さらに考えさせられるのは、自殺年代を分析した「孤独死者の死亡原因②」(下図)だ。

20代女性の自殺率は36.4%と極めて高い。また20~40代では男女ともに各年代で自殺割合が20%を占めている。

本レポートを公表した日本少額短期保険協会の分析によれば、全国民の死亡者のうち自殺者が占める割合の1.4%(※1)と比較すると、孤独死に占める自殺の割合が突出して高いことが分かった。孤独死者 

(※1)「令和4年人口動態統計」(厚生労働省)、「令和4年中における自殺の状況」(厚生労働省自殺対策推進室調査と警察庁生活安全局生活安全企画課調査)をもとに算出

国土交通省策定の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(2021年公示)によれば、賃貸住宅内で病死し早期に発見された場合の告知義務はないが、自殺は別だ。借り手に心理的瑕疵が生じるため発生時から3年の間は「事故物件」としての告知義務が生じる。

同じく病死などであっても特殊清掃が入るような状態で発見された場合も告知が必要となるため注意したい。

女性の孤独死者は5割弱が3日以内に発見。一方、男性は15日以上と長期化

同じく男女差が見られたのは「発見までの日数」(下図)だ。女性の孤独死者で3日以内に発見されたケースは47.0%(男性38.9%)、73.4%が2週間以内に発見されている。一方、男性は15日以上経って発見されるケースが30%を超えており、長期化の傾向がみられる。

発見までの日数

近親者の発見は4割弱。女性は男性よりも10ポイント以上高い

誰が孤独死を発見したのかとする「第1発見者の構成」(下図の上段)を見ていくと近親者が37.1%、続いて不動産管理会社や仲介会社、オーナー、行政サービスや見守りサービス、宅配業者など、警察の職業上の関係者による発見が51.0%を占める。(表のカッコ内の数字は第7回レポートの数値)

前出の統計で20代女性の自殺率が高いとするデータを紹介したが、日ごろから家族や友人とコミュニケーションを密にしているのも女性に多いようだ。

発見者

「性別による第一発見者の構成割合」(上図の下段)によれば、親族や友人などの近親者による発見は男性が35.8%に対し、女性の場合は46.1%と約10ポイント高い。女性のほうが家族や友人などが異変に気づき、早期発見につながっていると想像できそうだ。

これらの調査結果から分かるのはやはり早期発見の大切さといえる。

保険面でいえば、いわゆる「孤独死保険」は大家が加入する「大家型」と入居者が加入する「入居者型」の2種類ある。

大家向けの「孤独死保険」が販売されたのが2010年。あそしあ少額短期保険の「大家の味方」が最初だった。それから13年が経ち、2024年1月31日時点で121社ある少額短期保険会社のうち4割が「孤独死保険」を扱うまでになった。ここ数年の間で大手損保会社も参入し孤独死保険の取り扱いは増えている。

「大家型」は原状回復費から家賃保証までを含んでいるが、「入居者型」は主に火災保険や家財保険の特約や付帯サービスで原状回復費用・遺品整理費用、家賃保証はない。

また「入居者型」の保険は故人の相続人に保険金が支払われるため、大家側の支払いに充てたくとも難しい場合も多いだろう。特約で故人に代わって大家や管理会社が請求できる場合もあるので確認したい。

一方、「大家型」も区分所有のマンション向けの商品はあるが、1棟もののアパートやマンションの場合は1棟単位での加入を基本としているので注意が必要だ。

1棟丸ごとすべての単身者に孤独死保険をかけるのはコストを考えると現実的ではないだろう。築古物件、コミュニケーションの取りづらい入居者の多い物件などメリハリをつけて加入を検討したいところだ。

執筆:スドウミキ(すどうみき)

スドウミキ

■ 主な経歴

出版業界で20年勤務。不動産分野を専門とする雑誌での取材・編集をきっかけにサラリーマン大家の夫と出会い結婚。2022年宅地建物取引士の資格を取得。夫の勧めで法人を設立し、築古アパート1棟を購入する。1歳の子どもを持つ一児の母。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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