皆さま、こんにちは。札幌は八月に入っても暑い日が続いています。我が家ではエアコンのあるリビングに子供たちが布団を持って来て、川の字で寝るのがすっかり日課になりました。
本州の方は、居室にエアコンがないのは信じられないかもしれませんが、札幌ではエアコンが普及しだしたのはここ10年くらいです。最近は物件のエアコンの設置も進めていて、おおよそ導入が終わったところです。
ところで、このコラムが掲載される頃には決済が終わっていると思いますが、この8月にひとつ、戸建の売却決済があります。平成29年に会社を退職して念願の専業大家となり、最初にした事が「戸建投資」への挑戦でした。
それから約6年が経とうとしています。この間、20棟近く戸建を買ってわかったことが多くありました。今回はそのお話と、これからの戸建投資について、紹介したいと思います。
■18棟の築古戸建を所有してわかったこと
もともと戸建投資に挑戦するキッカケは、健美家の大家列伝の石井豊さんの記事を読んだことでした。
参照:大家歴33年の石井豊さんが語る「年々厳しくなる市況」と今ならこうする反省点
それまでの「堅実だが、あまり儲からない戸建投資」というイメージから、創意工夫をする事できちんと利益を出す事が出来る投資へと、印象が変わりました。
その後に、石井豊さんから直接、戸建投資について教えて頂いたり、ルイ109世帯さんからアドバイスを頂けたりしたこともあり、これまでに18棟の戸建を取得する事が出来ました。
その中で、自分の中では戸建投資は大きく分けてふたつの手法があると思う様になりました。ひとつは、収益性を重視した現金高利回り戸建投資。もうひとつは、資産性を活かして融資を使った戸建投資です。
前者はその地域の中心部からは離れた地方エリアに位置することが多く、物件価格やリフォーム費用を極力抑え、時にはDIYも活用しながら高利回りを目指し、投資資金を早期に回収するという手法です。
後者は、地域の中心部から遠すぎないエリアで、表面利回りは高くないけれど、資産性を活かし、融資を使う事で投資効率を上げていく手法です。(私は公庫の無担保融資を使わせてもらうことが多かったです)。
売却も経験しました。私は戸建を買う時には法人名義で取得していました。売却の際には個人名義の場合と違い、短期譲渡所得や長期譲渡所得の期間に縛られる事なく、物件を手放す事ができました。
そうして戸建投資をしながらキャッシュフローとキャピタルゲインで得た資産を、少しずつ積上げてくる事が出来ました。
正直、戸建は単体で見れば利益は大きくはありません。しかし、古い建物がリフォームでキレイになる姿を見たり、価値がないと思われていた物件が生まれ変わって、そこに人が住んでくれたりという経験に、最高のやりがいを感じました。
また、無担保で買った激安の物件を別の一棟物のアパートやRCマンションの融資の際の「共同担保」に入れることで、物件購入の後押しをしてくれたことも何度もありました。
これは、限られた手元資金を効率よく増やしたい初期の頃には大変ありがたかったです。
今でも「一番好きな不動産投資の手法は?」と聞かれたら、「戸建投資」と即答すると思います。あの、全てが自分の手の中でコントロール出来る感覚は、何物にも代えがたく面白いんですよね。
ただ、物事にはどんな事にもメリット・デメリットがある様に、戸建投資にもデメリットはあると感じました。たかだか6年の経験ですが、その中でも色々な発見がありました。
■トラブルが多いのが、ダントツで「築古戸建」
実は、私の所有する全物件の中でトラブルが多いのが、ダントツで「築古戸建」です。特に、激安ともいえる価格で取得した物件は、購入後にストレスになることが多かったです。色々なところが壊れるのです。
北海道の地方エリアの築古戸建は100万円以下で買える事もあります。そうなると、自己資金でも充分に買えるため、購入の精神的なハードルが下がりがちです。
アパートで融資を使って購入検討する時は慎重にリスクを検討するのに、格安の戸建となると「何とかなるだろう」と安易に考えてしまう事がありました。
そういった家は表層リフォームで見た目はキレイにできても、全部直しきるのは困難です。そのため、設備が壊れたり、ドアや建具の建て付けが悪かったり、何度も修理が必要になることがありました。
壊れたところを直しても、築古のものはどうしても断熱性に劣ります。家の中の夏の暑さや冬の寒さについては、対策にも限界がありました。そういったクレームも実際に出やすかったです。
アパートでも築40年オーバーで同様の状態あれば、同じ様な状況になると思いますが、戸建は入居者の人数が多いので、さらにトラブルが起きやすくなる気がします。
そして、築古の戸建投資について考えさせられる事は他にもありました。数か月前に北海道で震度5程度の地震がありました。所有物件の一部を地震保険の調査員さんと見て回りました。
幸い、大きな被害はなく安心しましたが、それでもアパートやマンションに比べ、築古戸建の方は多くのクラックが見られました。旧耐震の物件も多いので、そうなったのだと思います。
普段、一度入居が決まってしまうと、建物の状況や、ましてや基礎の状態など確認する事はほとんどありませんでしたが、改めて地震でできたクラックを見ると、大家としての責任を感じました。
不動産投資家さんの中には、筋交いを入れたり、断熱材を入れ直したり、最初にしっかり手間もお金もかける状態にする方もいて、見習いたいと感じています。自分はそこまではやれていませんでした。
戸建投資を始めた当初の「利回り20%達成!」などと言って、はしゃいでいた自分が恥ずかしく感じました。決して悪いことではないと思いますが、自分の事しか考えていなかったのではと反省します。
■現金で買った戸建を共同担保に入れる時の注意点
現金で買った戸建を共同担保に入れることについての補足です。戸建てを共担に入れて別の物件の融資額が伸びると、嬉しいですよね。しかし、その戸建を売却したくなった時に、問題になることがあるので注意が必要です。
金融機関さんは共同担保を取る際にまず、対象となる物件の評価額を出します。その際に、例えばこの戸建が500万円の評価額がある場合、これを共担に入れることで、アパートの融資額にその分を上乗せします。
もしその戸建を将来売却したいとなった時は、共同担保を外す必要がありますが、その際に、当初の評価として見てもらっていた分の金額を、金融機関から求められることがあるのです。
そうなると、せっかく売却で得たキャッシュをそちらに充てることになる可能性も出てきます(評価額や返済額は相談で決まるため、最初に評価された金額と同じになるわけではありません)。
長く持つかわからない物件を他の物件の融資の際の共担に入れる場合は、金融機関の方針をあらかじめ確認するなど、その先のことも考えておく必要があります。共担に入れる前に意識して欲しい点です。
■築古戸建投資から新築戸建て投資へ
私自身は今後、戸建投資をするのであれば、築古戸建ではなく、新築戸建に挑戦してみたいと思っています。
希望の利回りや予算など課題はあると思いますが、入居者様に安心安全で快適な住まいを提供していると自信を持って言えるような、そんな事業をしていきたいと思います。
その際には、地場で取れる材料の、「道南スギ」や「札幌軟石」など地域に根差した建物に出来るとより楽しいだろうな、なんて考えています。
不動産経営はいつになっても初めての経験の連続です。これからも自分の心に正直に、そんな初めてに取り組んでいければと思います。