自由民主党賃貸住宅対策議員連盟(ちんたい議連)が6月9日に自民党本部で開催され、賃貸住宅業界の要望を決議した。この議連は5月末現在、衆議院244人と参議院93人で構成されている自民党国会議員の約9割を占める最大の議連である。会長には石破茂衆議院議員、会長代理に逢沢一郎衆議院議員、幹事長に中谷元衆議院議員が就いている。
賃貸住宅業界団体の全国賃貸住宅経営者政治連盟は、重点要望事項として次の4項目提出した。
①国民の住生活の安定確保のため、民間賃貸住宅を住宅セーフティネットとして活用するにあたり必要な支援の拡充を図ること。
②家賃滞納者への明渡しに係る指針の明示を求める。
③円滑な建替えを推進するため、借地借家法の正当事由の見直し等を求める。
④サブリース契約は、貸主からの解約には正当事由を不要とすること。⑤中古賃貸住宅に改修工事を施した場合、その価値を適正評価する制限創設を求める。
高齢者・低所得者等への対応
まず、①の住宅セーフティネットでは、少子高齢社会で増加する単身高齢者を踏まえての対応を求めているものだ。連帯保証人の確保が難しくなっている現状を受けて、家賃債務保証を利用することが事実上の入居条件となっている。
だが、2022年12月の最高裁判決では、「債務保証債務の履行があるときは、賃貸人との関係においては、賃借人の賃料債務等が消滅するため、これを理由に賃貸借契約を解除できない」と言及したことで家賃滞納を繰り返しても家賃債務保証会社の代位弁済で入居継続が可能になるというモラルハザードの可能性を指摘したうえで、高齢者の入居審査の厳格化も招き、こうした流れが高齢者だけでなく一般的な低所得者層にも波及して住宅の確保が難しくなる人が増えるとの懸念を示した。
このことを踏まえて民間の賃貸住宅を住宅セーフティネットとして活用する支援強化を求めている。例えば、入居期間に応じた奨励金や協力金制度の創設、入居審査緩和に応じた民間事業者の負担リスクを公的に補償するなどだ。
賃貸オーナーが要配慮者を受け入れるハードルを下げるためには、入居者死亡後の残置物の対応で助成制度の創設なども求めている。高齢者だけでなく、現役世代でも孤独死が少なくないため年齢に関係なく身寄りのない人への配慮も欠かせないとする。
家賃滞納への対応、建替え促進と中古適正評価
次に家賃滞納者への対応だが、これは古くて新しい問題として賃貸オーナーが最も注目する部分である。公営住宅法では、入居者が3カ月以上滞納した場合に賃貸借契約を解除して明け渡しを請求できる条項が備わっていることを踏まえて、民間賃貸住宅でも同様のガイドライン等が必要だとし、国が明示する必要があるとした。
築年数が古い賃貸住宅を円滑に建替えするためには貸し主都合の解約にかかる正当事由の見直しが必要だとした。住生活基本計画において分譲マンションの円滑な建替えの促進が示されているが、賃貸においても分譲と同じ社会インフラとしての対応を求めている。また、建て替えに伴い入居者がいる場合は立退料が発生するが、ときには貸し主都合ということで高額な立退料を必要とすることもなくはない。このため立退料の助成を求めている。
サブリース契約では、借地借家法の正当事由が壁となり貸し主から解約ができないが、一般的な賃貸借契約である貸し主と借り主の関係性とは違い事業者同士が当事者となるサブリース契約では解約に正当事由を不要とすることを要望している。
前述した円滑な建替え促進だけでなく、中古賃貸住宅の資産価値を上げるような改修などを施した場合は、その価値を適正に評価する制度創設が必要だとした。一律に築年数で資産価値を評価する現行の金融機関の方法は実態にそぐわないとの見方だ。
共済掛金での損金対象の拡大を
重点要望に加えて、継続要望としては「家賃及び共益費への消費税課税は対象外」とすることや、家主向け支援措置の強化で賃貸業界団体は共済協同組合を立ち上げて共済掛金として全額損金が認められ計画的に修繕できるようになったが、その対象は外壁と屋根に限定されている。
これを分譲マンションと同様に鉄部や共用廊下、バルコニー、給排水管等のすべての共用部と、風呂やトイレ、キッチン、洗面台の水回り設備の修繕・交換工事費も対象に追加することを引き続き要望した。
また、全国賃貸管理ビジネス協会では、新規の要望として「外国人による不動産取引への措置」を盛り込んで、外国人による国内不動産の無制限な取引は是正されるべきだとし、①土地所有における外資規制、②需要土地の取引抑制、を求めた。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))