定期的に競売セミナーを開催し、日々、競売の相談を受けているドクターKである。競売で公開されていたアパートの競売事例をご紹介する。
今回、紹介する物件は、北関東のアパートである。裁判所から公開された資料では、サブリース契約中であり、契約期間が令和10年までである。表面利回りは、落札金額より15%の物件である。
この物件の長所は、落札金額を裁判所へ納付後、直ぐに家賃収入が得られる。かつ、サブリース契約であるため、令和10年まで安定的に収入が得られるという点である。
通常、一般的なアパートを落札した場合、部屋の状況次第ではあるがリフォームが必要であり、その後、空室なら不動産業者へ依頼し、新規入居者を募集する必要がある。
落札した後でも非常に手間と時間を要する。今回、ご紹介する物件は、リフォームや募集をする必要がなく、安定的に家賃収入が得られる。比較的に良好な物件だと思う。このような物件も公開されていることをご参考に頂けたらと思う。
1.物件概要
(1) 所在地
物件がある市町村は、北関東にある約16万人が住んでいる。東京から北に約60km離れたところに位置する。この街には新幹線が停車する駅があり、東京まで約40分で移動することができる。都内にも通勤可能な場所である。
(2) 物件概要
物件は、土地が236平米であり、建物床面積が146平米の2階建てのアパートである。築40年経過している。外観は白であり、築古ではあるので所々汚れが目立つ。土地の形状は旗竿地になっている。カーポートがあり、駐車は可能であるが、入口が狭いため、大型の車は難しいだろう。
この物件の近辺状況について、最寄りの駅は、新幹線が停車する駅であり、物件から約800m離れたところにある。徒歩でも移動可能である。物件は住宅街の中になり、近隣には駅近でもあるのでファミリーレストラン、コンビニ等が多く点在している。日常生活で不便に感じることは無いだろう。

(3) 間取り、室内
間取りは、以下の通りである。1階は、2DKの部屋が2つあり、トイレ、浴室は別々である。2階は1階と同じ間取りであり、合計4部屋である。各部屋の床面積は30〜35平米ぐらいである。

以下、室内の写真である。空室の写真であるため、残置物は特にない。また、壁紙は汚れが目立つ。

2.物件詳細
(1) 賃貸契約の内容
裁判所の公開資料には賃貸契約の内容が記載されている。以下、その賃料であり、転賃借の情報もあるので、誤解しないように頂きたい。
この賃貸契約は一括のサブリース契約であり、月々120,000円の収入が得られる。また、各部屋の賃料を確認すると、32,000円であり、3部屋賃貸中であるため、合計96,000円である。
この事から家賃収入よりもサブリース契約の費用が多く、サブリース契約の会社は儲かっていないと思われるだろう。但し、今回、障害者用の物件であり、サブリース会社は、入居者から賃料だけでなく、おそらく、サポート費用や食費、水道光熱費などを受け取っているので収益はあると思われる。

(2) 関係者のコメント
裁判所の公開資料には、通常、債務者、賃借人の関係者のコメントが記載されている。この内容より、この物件は障害者用のグループホームとして利用されている。

(3) 物件評価の金額
裁判所から依頼された不動産鑑定士による競売の基準価格は以下である。
6,882,000円
上記の金額は、裁判所から依頼された不動産鑑定士によって、査定される。この金額は、一般流通市場の価格よりも安く設定される。理由は、この金額が一般流通市場よりも高いと誰も入札せず、競売自体が成り立たないためである。
3.落札結果
(1) 落札結果
落札金額は以下である。入札件数は3件であり、個人が落札している。個人が落札しているため、転売ではなく、自己所有し、家賃収入が目的である。
9,050,000円
(2) 利回り
利回りを計算する前提として、裁判所から公開された賃料が継続可能であるとする。また、サブリース契約を前提として、利回りを計算する。
落札金額 9,050,000円
月額家賃収入 120,000円
諸費用 300,000円(登録免許税や不動産取得税などの概算金額)
表面利回り 15.4%
4.最後に
本物件に関して、北関東の築古のアパートであり、サブリース契約を継続した場合、利回り15%である。リフォームは不要であり、家賃収入も安定的に得られる。
かつ、令和10年までのサブリース契約であるため、約6年残っている。サブリース契約の期間が終わるころには、今回、支払った落札金額がほぼ回収できる。
但し、築40年経過している物件であるため、修繕等のリスクはあるが、悪くはない物件だと思う。このような物件もあることをご理解頂き、ご参考頂ければと思う。
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