
コロナ禍で戸建て住宅が人気を集めているようだ。テレワークが浸透したことで、その仕事スペースを確保するためにマンションより広い居住スペースを求めるといったものが一般に言われているが、ただ単に仕事場を確保するのではなく、長期化している新型コロナウイルスの感染拡大が住まいに対しての価値観に影響を及ぼし、在宅時間が長くなった分、住まいに快適な環境を求める意識が強まっている。
そうした中で、賃貸住宅市場でも戸建てニーズが広がりつつある。ケイアイスター不動産(埼玉県本庄市)は12月17日、賃貸住宅付き戸建分譲住宅「戸建て大家さん」が完売したと発表した。
同物件は最寄りの駅から徒歩10分圏内に2棟を建てた。この2物件を見ると、一つは二世帯住宅を検討していた人が購入し、もう一つは法人が1階部分を社員寮として利用することと、先々は投資物件として利用できることを見込んで購入したという。駅近で入居者の利便性が高い戸建て住宅ということもあって賃貸の空室リスクが低減できる。
ケイアイスター不動産では、1階にワンルーム(約14.2〜約17.6u)が2部屋という賃貸併用を想定した間取りであることと、住まい手の将来の環境変化に応じて賃貸住宅や二世帯住宅など様々な用途で活用できる柔軟性のある間取りであることが好評だったという。
このため、「戸建て大家さん」について、収益物件の保有を目的としたニーズだけでなく、戸建てには幅広い収益機会があると見ている。戸建て住宅は「マイホーム(住む)+賃貸(貸す)」を可能とした商品であり、同社が当初ターゲットとしていた収益物件の保有目的に限らない潜在ニーズに対応できることが分かったと戸建てニーズの広がりに期待している。
初心者にはボロ戸建て投資でもハードル高い
戸建て人気が高まっているが、中古戸建て住宅での賃貸ニーズはどうか。
これまで個人不動産投資家の間では、ボロ戸建て投資が人気化している。数万円〜数百万円で購入した郊外の築古戸建て住宅をリノベーション後に貸し出して利回り30%、なかには利回り50%で運用するといったものだ。
利回り50%は投資回収にかかる期間が2年だ。こうした謳い文句に惹かれて注目する個人の不動産投資家は少なくない。
自己資金で物件を購入してリノベ費用をローンで賄ったり、購入費用だけでなくリノベ費用まで含めてローンを引っ張って運用する。ただ、オーバーローンやリノベに費用を掛け過ぎたりすれば投資妙味が減っていく。
「住んでもらえる状態にするなど手間を惜しんでいては成功しないのが築古戸建て住宅への投資だ。リノベで相場以上の賃料を取れる賃貸戸建てに仕立て上げるのが重要だ」と、都内のある個人投資家は語る。別の投資家は再建築不可の物件を格安で購入し、1年後に1000万円以上の値上がりで売却できたケースもある。
とは言え、初心者にとっては、ボロ戸建てであっても参入ハードルは高い。投資・運用実績がないだけに銀行は築年がかなり経過した物件への融資に応じてくれない。自己資金を用意できている人でないと難しいのが実情である。例えば500万円以上といった一定の預貯金があるなど。貯蓄がない、貯蓄が乏しいといった場合は、資金を貯めることがスタートラインとなる。
ボロ戸建て住宅ほど立地条件が重要になる
ボロ戸建て住宅は投資市場として未だ健在である。500万円以下で物件を買い上げ、数年で投資回収して、その物件からのキャッシュフローと物件を担保に次の投資物件を購入する。それを繰り返すことで資産を増やしている投資家を見ることも珍しくない。
だが立地の重要性は変わらない。格安物件ならなんでも良いわけではない。むしろボロ物件だからこそ立地条件が劣ると失敗する。
この立地条件とは、「別に都心に近い」「都市部である」ではない。郊外でも基本的な生活利便性を確保できていれば投資対象となる。入居者が付かない、ローン返済に影響を与えるまでに家賃を下げないと入居してもらえない、そうした場所になると売却値にも影響を及ぼし、本末転倒な結果に陥ってしまう。
投資エリアの選別は、日本における社会構造上の問題から無視できない。人口減少が本格化していると同時に空き家も増加の一途をたどっているが、空き家が増え続けているエリアは居住地として魅力がないことを暗に物語っている。将来の資産家に向けてのタネ地の選別は容易ではなくなっている。
冒頭で紹介したケイアイスター不動産のように事業者も戸建て賃貸に着目している。不動産のプロが市場に新規供給する戸建て賃貸と入居者の争奪戦は激しくなる。賃貸負担能力の高い入居者の争奪でボロ戸建て住宅では分が悪い状況になるかもしれない。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))