今回も初心者大家さんが注意すべきポイントについて、法律知識も交えてご紹介していきたいと思います。第2回は、「利回り以外の注意点:道路編」です。
1件目の不動産を購入する際に、①利回りがどれだけあるのか、②賃貸ニーズがあるのかどうか、③駅徒歩何分ぐらいなのか、といった賃料及び賃貸需要の点は、気にして購入される方が多いです。
一方、初心者大家さんは、どうしても長期の修繕費や、出口戦略時の売却可能性を見過ごして購入することが多いです。今回は、不動産の価値へと大きく影響する「道路付け」について基本的な事柄をお話ししていきます。
修繕費というのは、大まかには想定して置けるものの、個別のトラブルに関する修繕は予測できないので、高利回りで何かあっても補填できるようにしようと、一層利回りに注意するのはよくわかります。ただ、なかなか世の中「お宝物件」というのはないもので、高利回りである物件は「道路付けが悪い」ものが多いです。
まず、基本的なところですが、建物は接道義務と呼ばれる道路付けがないと建築基準法の要件を満たさないものになっています。幅員が4メートル以上の道路に最低限2メートル以上接道しておかないといけません。
(道路の定義)
第四十二条 この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(・・・)以上のもの(・・・)をいう。
4メートルといえば、だいたい2車線あり対抗車両とすれ違うことができるような道路です。もっとも、日本の道路はそのような大きなものばかりではなく、「4メートル未満のもの」も多く存在します。
そのような場合、2項道路と呼ばれるのですが、道路の中心線からそれぞれ2メートルになるように敷地内を後退する(敷地の一部を道路に供して)、セットバックすれば建物を建てられるようになります。
2 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(…)の線をその道路の境界線とみなす。
「今、建物建ってるし大丈夫でしょ?」なんて思われるかもしれませんが、日本には、再建築不可物件と呼ばれるように、現状建物が建っているが、建て替えができないような土地も多数存在しています。
多少セットバックする程度で、立て替えに影響がなければよいのですが、セットバックすることで次の物件の間取りが著しく制限されないかどうかは、考えて購入すべきだと思います。
再建築不可物件でも賃貸に出す分には、あまり影響がなく、リフォームはかけられるので、「再建築不可物件でも賃貸業を行う以上問題ない!」という考えで購入されるのであれば、一つの考え方なのですが、あまりよく考えずに、利回りだけ買ってしまっている人も多いので、今回道路付けについてお話ししました。
また、道路付けについては、車が入口まで入れる道路か否か、というのも重要なポイントです。たとえば、車が通れるのは、手前までで賃貸物件にいくには、細い道を数分歩かないといけないとします。重機が入れられないので、解体作業ができない、ないし非常に高額になるとか、建築時にも費用が高騰することを覚悟せねばなりません。
簡単にイメージしていただくと、重機や車が入れないので、大型機械でできる作業を、人がすべて代替しないといけないと言えば、高額な費用になってしまうのも致し方ない、とわかっていただけるかと思います。
さらに、道路にも、公道という行政管理の道路と、私道と呼ばれる個人の方が有している道路があります。建物を建てるためには、私道の場合道路所有者から、「通行掘削承諾」を取られることが必要であり、私道の場合には、この承諾が得られずにトラブルになることが頻発しています。この部分は深堀すると、盛沢山なのでまた別の機会にお話しするとして、私道だとさらにトラブルの種が増える、と覚えておいていただければと思います。
さて、今回の教訓では、利回りと賃貸需要だけではなく、「道路付け」にも注意して物件購入を検討しましょう、ということです。
私も当初は、ネットで物件を探して、高利回りの物件ばかりブックマークをつけていた時期もあるのですが、不動産賃貸業においては、「トラブルがなく、長期間保有できること」が価値を生み出すので、たとえ、利回りが1~2%低くとも、トラブルが起きる蓋然性が低いこと、また、売却して資産の組み直しができることが大きな価値を有しているのではないかと考えなおすようになりました。
もちろん、再建築不可物件や狭小道路という弱点を理解しながら、それを克服できる準備があり、そのような物件ばかりを集めて高利回りで賃貸に課すという戦略もあるかと思います。ただ、何も知らずにうかつに手を出すのはやめましょうという注意喚起が、今回のお話しでした。