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知識が収益を生む 日比谷線の穴場駅「三ノ輪」商店街ど真ん中、狭小老朽ビル、解体途中物件の活かし方

賃貸経営/リノベ・修繕 ニュース

2023/12/09 配信

東京メトロ日比谷線。目黒区中目黒から六本木や霞が関、日比谷、人形町、秋葉原など都心のど真ん中を通って北千住に至る、日本のビジネスマンにとっても、海外からの来訪者にとっても使い勝手の良い路線である。

だが、その路線のうちに不動産的に凹んだ部分がある。入谷、三ノ輪、南千住の3駅である。この地域の可能性を考え、狭小ビルを購入した荻谷強さんに聞いた。

商店街ど真ん中、築61年の狭小ビルを購入

中央の白い建物が荻谷さんの購入したビル。知人の作品を店頭に飾り、それにちなんで「くじら不動産」
中央の白い建物が荻谷さんの購入したビル。知人の作品を店頭に飾り、それにちなんで「くじら不動産」

荻谷さんが購入した物件は三ノ輪にあるジョイフル三ノ輪という商店街入口近くに立地する。11坪ほどの土地に延床面積96㎡、昭和37年に建てられた築61年のRC造ラーメン構造のビルで店舗付き住宅として使われていたもの。敷地をほぼ100%使って建てられている。

「借りていたオフィスが2024年7月で解体されるため、退去することになり、それで不動産を探していた時にアットホームでこの物件を見かけました。価格は2500万円。

このあたりは戦後のどさくさで10坪くらいの住宅がずらっと建てられ、その後、それがそのまま建替えられたような小規模なビルが並んでいる地域。

目の前の商店街の通りは一見、細くて建替えができないような印象がありますが、実は幅員6mあり、双方向可能。購入した建物も実は再建築が可能です。

ただ、傾きがあり、年代モノの内装と設備で、しかも隣家とくっついているような状況のため、土地として売られていたのですが、解体はかなり難しそう。そう考えると、一般の人には手を出しにくい物件でした」という荻谷さんは建築出身の不動産会社経営者。法律も建物も分かる人というわけである。

1階オフィス。この裏に住戸の水回りが配されている
1階オフィス。この裏に住戸の水回りが配されている

1階をオフィスにして、2階以上を賃貸住宅に改装しようと考え、荻谷さんは2000万円の指値をしてしばらく傍観。最終的には2250万円で合意、購入することになった。

建築コストは1カ月で20%上昇?

右側が不動産店舗、その脇、奥まったところに住戸の玄関がある。宅配ボックスも設置してある
右側が不動産店舗、その脇、奥まったところに住戸の玄関がある。宅配ボックスも設置してある

改修では1階に不動産会社のオフィスを配し、その横の通路から住戸へ入る形に。住戸は2LDKのファミリータイプ。そのため、いたって普通であることを心掛けたそうだ。

2階のリビング。全体にシンプルに、荻谷さんの言葉でいえば普通にまとめられている
2階のリビング。全体にシンプルに、荻谷さんの言葉でいえば普通にまとめられている

1階は玄関を入ったところにトイレ、水回りを配し、2階がリビング、3階に寝室と書斎に使えそうなコンパクトな部屋が1室。4階には洗濯物干場や倉庫などとして使える多目的空間を設けてある。

こうした商品があることを始めて知った。うるさい立地では有効だろう
こうした商品があることを始めて知った。うるさい立地では有効だろう

商店街のアーケードに面しているので、通りが見えたり、アーケードのキャットウォークが見えたりと階によって異なる眺望が面白い。

商店街ではいつもBGMを流しているため、それが気にならないようにと沖縄の基地周辺などでも使われているという遮音性能の高いサッシが入っている。

3階の寝室から階段室を見たところ。細い階段だが、大きめの冷蔵庫も入るよう幅は確保してある
3階の寝室から階段室を見たところ。細く見える階段だが、大きめの冷蔵庫も入るよう幅は確保してある

もともとが細長い建物のため、水回り、階段などどうやって限られた面積をやりくりして必要な幅、広さを確保するかに苦労したという。確かに階によっては頭をぶつけそうな場所もあり、設計、施工ともに難事業だったことが想像できた。

カーテンがあるため、傾きのある部分が気にならない
カーテンがあるため、傾きのある部分が気にならない

もうひとつ、大変だったのは傾きの補正。床は水平を取ってあるが、そうすると巾木などとのバランスが悪くなり、分かる人が見ればあれ?ということになる。そこで荻谷さんはカーテンを設置、カーテン付きの物件とすることでそれをカバーすることにした。

4階の多目的ルーム。付けたければエアコンの設置ができるようになっている。ドアの上部を見ると傾き部分の意味が分かる。入居者には事前に説明するつもりと荻谷さん
4階の多目的ルーム。付けたければエアコンの設置ができるようになっている。ドアの上部を見ると傾き部分の意味が分かる。入居者には事前に説明するつもりと荻谷さん

今どき、カーテンもそれなりの金額になる。それがあらかじめ設置されていれば、そちらに目が行き、壁と床が平行でない点には目が行かなくなるであろうという算段である。入居する人にとっても床が傾いているのとは違い、身体には影響はない。損とは思わないのではなかろうか。

住戸としての面積は80.5㎡。ただ、階段室が4フロア分あるので、階段のないマンションに換算すると68㎡程度の2LDKになる。ただ、場所によっては階段室にもモノが置けると考えると余裕のある作りという言い方もできる。そのあたりを面白がってくれる人がいればはまるのではなかろうか。

かかった費用は解体に300万円ほど。不要な造作、家具を撤去、鉄製の窓をはつって入れ替えなどしている。かかった費用は解体を含め、総額で税込1500万円ほど。給排水、外壁塗装なども入っており、比較的低コストでできたと荻谷さん。

「最近では1カ月ごとに20%くらいはコストが上がっている印象。リフォームその他をやるなら少しでも早めに着手したほうが良いと思いますね」。

素人には手を出しにくい解体途中物件の勝算

荻谷さんが買ったのはこのビルだけではない。商店街の道路を挟んではす向かいの土地も購入した。

「元々は連棟2階建ての建物が建っていました。ところが、1軒の所有者が所有する部分を解体しようとして途中まで作業したものの、連棟物件は区分所有法下にあり、解体するには4分の3以上の同意が必要ということが判明。建物はなくなっているものの、使えない、更地にもなっていないという中途半端な状態になっていました。

しかも、建物が無くなっているので、これまで軽減されていた固定資産税を払わなくてはいけない。困り果てた所有者が売却を考えていたそうで、ビル購入のために金融機関とやりとりをしている中で、これも買わないかと持ち掛けられ、買うことになりました」。

花屋の手前、シャッターのある部分が荻谷さんが購入した土地
花屋の手前、シャッターのある部分が荻谷さんが購入した土地

路線価ベースでは㎡あたり44万円。40㎡強で1780万円ほどの土地を300万円、キャッシュで購入した。現在は残っている建物を借りている花屋に駐車場として賃貸している。

ずいぶん安く購入できたわけだが、今後値上げをするとしても駐車場として使い続けるだけではあまり美味しい話ではない。こちらも素人にはどう使えば良いか、将来的に出口はどうなるのかが見えない、手を出しにくい物件だが、荻谷さんには勝算があった。

「もう1軒は別の人が所有していますが、解体するためには前述したように私の同意が必要になります。もし、柱部分をこちら側に残すようにして分筆すれば解体はできるかもしれませんが、それをやると荒川区の最低敷地面積にひっかかります。荒川区の最低敷地面積は60㎡で、隣の敷地面積は38㎡。私の持ち分が40.5㎡で、この2つの土地は一体にしないと再建築不可になってしまうのです」。

となれば、現在、80歳ほどの隣戸の所有者が今後、この建物をなんとかしたいと考えた際の最良の解決策は荻谷さんに売却することになる。

「このエリアは不燃特区。そのため、老朽建築物の除却、不燃建築物への建替え時にはそれぞれ助成金が出ます。この助成金は宅建事業者には出ないので、個人名義で購入。いずれ解体、建替え時には個人として助成が受けられるようにしました」。

商店街再生に地元からの期待

法律、建物を知っていることで賢明な選択、購入ができたわけだが、荻谷さんはそのノウハウで地元三ノ輪の再生に寄与したいと考えている。

取材にお邪魔したのが平日の午前中だったため、それほど人出はなかったが、それでもそれなりに人は出ていた
取材にお邪魔したのが平日の午前中だったため、それほど人出はなかったが、それでもそれなりに人は出ていた

「ジョイフル三ノ輪はかつて非常に賑わった商店街で、その当時に比べるとかなり寂れてはいますが、それでもいまだに年間200件ものロケが行われています。なんにもなかった地域を再生するより、一時盛り上がった、実績のある街を再生するほうが早いだろうと考えています」。

日比谷線三ノ輪駅近くは明治通り、日光街道が交差する場所でもあり、車での交通利便性も高い
日比谷線三ノ輪駅近くは明治通り、日光街道が交差する場所でもあり、車での交通利便性も高い

荻谷さんが目をつけているのは都心を貫く日比谷線のポテンシャル。冒頭で書いたが、ビジネスマンにもインバウンドにも利便性の高い沿線で、三ノ輪は浅草にも近い。都心で遊んで下町風情が残る三ノ輪で食事、宿泊ができるとなれば人気を呼ぶだろうと考えているのである。近くには銭湯もあり、路面電車・荒川線も面白がられるだろう。

通勤の足としては微妙かもしれないが、観光客にとっては路面電車も楽しいだろう
通勤の足としては微妙かもしれないが、観光客にとっては路面電車も楽しいだろう

現時点では入谷から南千住にかけては不動産価格、賃料も比較的安く、動かしやすくもある。商店街の人達にもそうした動きを期待されているという。

ひとつ、問題は荒川区がインバウンド、DXに対して及び腰というより、強硬な反対姿勢を取っていること。

「インバウンド、DXを推進しようというのが国策だというのに、荒川区はそれをできないようにするような上乗せ条例を作っています。たとえば完全対面でのチェックインでなければ許可しない、ロビーは6㎡以上あり、そこを通って客室に行けるようにしないとダメなど民家を利用した宿泊は絶対にできないようになっています」。

街や商店街のポテンシャルを生かした将来像を描こうとするのではなく、現状維持、変化を好まない声が中心になっているわけで、それでうまくいくなら現状の衰退はない。現状路線がうまくいっていないから、新しい生き残りを考えようというのが今の日本の状況だと思うが、そのあたり、自治体によって大きな温度差がある様子。

だが、いつまでもその状況で良いのか。荻谷さんの三ノ輪での活躍と同時に荒川区の変化、奮起も期待したいところである。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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