日経平均株価が34年ぶりの高値をつけて絶好調だが、その裏で東証REIT指数は1,700台と落ち込んでいる。反対に考えれば、高い利回りのJ-REIT銘柄を安く買えるチャンスとも言えるだろう。
株式投資で配当金生活を楽しむように、J-REIT(ジェイリート)でも分配金(株式投資の「配当金」と同義)を毎月もらおうというシリーズ。
J-REITは年2回決算があり、その決算毎に分配金が出る。ところが、J-REITは株式会社と違って、3月/9月決算銘柄が少ない。
そのため、物流施設特化型リートに似ている倉庫会社(3月本決算+9月中間決算)の注目銘柄を1つご紹介する。
3月決算のJ-REITや株式会社の株をいま買うと、3ヶ月後の6月に分配金や配当金がもらえる。
3月決算のJ-REITは3銘柄だけ!
J-REIT では3月決算の銘柄は少ない。系列リートとの合併などで3銘柄に減ってしまった。
ジャパンリアルエステイト投資法人
グローバル・ワン不動産投資法人
大和証券リビング投資法人
※証券コード、銘柄名、投資口価格、予想分配金利回り。「投資口価格」とは、J-REITの場合の「株価」に相当する。投資口価格と予想分配金利回りは2024年3月5日終値現在。
J-REIT(ジェイリート)とは証券市場に上場している金融商品「不動産投資信託」のこと。J-REITを購入すると、株を買うぐらいの小口資金で大規模大家さんの仲間になれる。
J-REITの分配金利回りは3~6%と、株式投資よりも高配当なものが多い。
そして、3月決算の注目銘柄はジャパンリアルエステイト投資法人と、J-REITではないが3月決算の三菱倉庫株式会社だ。
19期連続増配を続けるジャパンリアルエステイト
スポンサーは三菱地所
ジャパンリアルエステイト投資法人(JRE)はオフィスビル特化型リートだ。2001年9月に、日本で初めて東京証券取引所に上場したJ-REITの一つ。
資産規模は1兆1,414億円と大規模だ。
スポンサーは、「丸の内の大家さん」と呼ばれる三菱地所株式会社。
投資方針は、首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)で70%以上、その他の地方都市(札幌・仙台・名古屋・大阪・神戸・広島・福岡等)30% 以下。
投資対象のビルの規模は延床面積 3,000㎡以上で、新耐震基準に適合している物件だ。
現在は76物件を保有している。
首都圏で81.9%。そのうち、東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)で67.6%、その他の23区は8.5%、東京23区以外が8.9%だ。
他には、大阪市・京都市で8.9%、名古屋市で2.6%、その他6.6%。
同リート(JRE)のメイン物件は、東京都心5区内に建つ高品質なオフィスビルだ。
最近の状況を見てみよう。
2023年8月31日に、オフィスビル「フォーキャスト堺筋本町」(⼤阪市中央区)を17,215百万円で取得した。2009年竣⼯のビルで、2018年に共⽤部の改修⼯事が行われている。
大阪のオフィス街である堺筋本町エリアに建ち、大阪メトロの同駅まで徒歩1分と利便性が高い。
2023年12⽉1⽇に、「シーバンスS棟」(東京都港区)を2,290百万円、持分割合4.21725%を追加取得した。合計で、持分割合が17.66725%になる。
1991年竣⼯のオフィスビルで、2012年に大規模リニューアル⼯事が行われている。
JRや東京モノレールの「浜松町駅」から徒歩7 分。浜松町駅周辺では、同ビルへの⾃由通路拡幅を含む整備工事が行われており、近隣でも⼤規模な複合施設が開発中だ。
2024年2月14日に、「豊洲フォレシア」(東京都江東区)を19,756 百万円、持分割合22%を追加取得した。合計で、持分割合が31%になる。
2014 年竣⼯のオフィスビルで、スポンサーの三菱地所が開発した。同ビルは東京メトロとゆりかもめの「豊洲駅」まで徒歩1分、⼤型商業施設も近くにあって利便性が⾼い。
売却については、「晴海フロント」(東京都中央区)を3期(2023 年 3 月期、2023 年 9 月期、2024 年 3 月期)に渡って分割譲渡している。
最後の3期目の譲渡が、2024年1⽉12⽇に実施された。譲渡先は非開示となっているが、米国の資産運用会社ブラックロックが取得したようだ。
晴海エリアは他エリアに比べてオフィスの需給状況が悪く、同ビルの主要テナント(三菱UFJ子会社)が退去する事から、JREは売却する事を決断した。
しかし、買い手側のブラックロックなど外資系企業にとっては、日本の低金利と円安の影響で、日本のオフィスビルは割安に感じるのだろう。たとえ賃料を下げて新テナントを募集したとしても、十分採算が採れると思ったのではないだろうか?
なお、「晴海フロント」の譲渡益は、配当金の原資や内部留保に使われる。
JREは19期連続で分配金を増配してきた。半年毎の決算なので、19期連続とは約10年間連続で増配してきたということ。
現時点で、今期(2024年3月期)と次期(2024年9月期)の予想分配金は、連続増配を下回る金額を発表している。
とはいえ、約10年も増配を維持してきたことや、オフィスビルの賃料改善が見えてきたこと、晴海フロントを手放して空室率が下がり売却益が入った事などを鑑みると、結果として予想より上ブレする可能性はあるだろう。
昨今は系列リートを合併して、大規模な総合型リートに鞍替えする銘柄が増えてきた。総合型リートの場合は、購入する物件と売却する物件の種類が違っても問題ないため、幅広く投資できる点が利点だ。
反対に、特化型リートの利点は専門性に優れているため、目利きが効くことだろう。
コロナ禍はオフィスビルには逆風だったが、底打ち感も見えてきている。
JREは大手らしく、健全な財務体質を維持し、長期的な安定運用を目指している。
総資産に占める有利子負債比率(LTV)は30~40%程度を目指し、他J-REITに比べると保守的だ。現在のLTVは簿価で42.6%、時価で33.6%だ。
※有利子負債比率(LTV)(%)= 有利子負債 / 総資産×100
また、格付けも最高水準で、JCRでAA+、R&IでAA、S&PでA+を持つ。
ジャパンリアルエステイト投資法人
予想分配金:2024年3月期(第45期)11,700円、
2024年9月期(第46期)11,300円
保有物件数:76
取得価格合計:11,414億円(2024年2月14日現在)
倉庫専業の最大手、三菱倉庫(株)
物流(陸上、港湾、国際一貫輸送)と不動産業が強み
物流特化型リートに似ている点がある倉庫会社に注目してみよう。
三菱倉庫株式会社は、東京・深川で創業した三菱為替店の倉庫業務を継承して、1887(明治20)年に設立された。
1918年に現在の商号に変更。
1931年には、日本初の「トランクルーム」サービスを現在の東京・日本橋で始める。
1949年、東京証券取引所に上場。現在は東証プライム市場。日経平均株価の構成銘柄として、倉庫業では三菱倉庫だけが採用されている。
1962年、倉庫や住宅、コンピュータの複合賃貸ビルを東京・深川に建設し、コンピュータ用の賃貸ビル事業を始める。その後、不動産事業を拡大し、オフィスビルや商業施設、コンピュータ専用ビル、分譲マンションの建設を行う。
これ以降、同社の柱は物流部門と不動産部門の2つになった。
さて、同社の物流部門には、倉庫事業、国際輸送事業、港湾輸送事業がある。
倉庫は国内90箇所、海外50箇所(米国、ヨーロッパ、中国、アジア等)に拠点がある。1992年からは高機能の倉庫を建設し、施設の高度化を進めている。
そして、倉庫で保管や配送、通関、流通加工等を連携して行っている。また、医薬品対応倉庫では、出入庫管理や保管とともに、医薬品に特化した保冷配送や輸出入等も行っている。
同社が初めて考案した「トランクルーム」サービスでは、文書や磁気テープの保存、温湿度管理の難しい美術品の保管などを手掛けている。
もう一つの柱である不動産部門では、東京や横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡で不動産賃貸業などを行っている。自社の所有地を再開発し、不動産施設は約50棟、延床面積は約100万平方メートルに及ぶ。
オフィスビルは日本橋ダイヤビルディング(東京)など、商業施設・ホテルでは「横浜ベイクォーター」や「神戸ハーバーランドumieモザイク」などがある。
賃貸住宅は隅田リバーサイドタワー(東京)などだ。また、分譲マンションの建設・販売も行っている。
最近の業績を見てみよう。
2023年4月1日から2023年9月30日までの「中間報告書」を見ると、営業収益は前年同期比18.5%減の1,257億6千万円。
原因は、海上運賃の単価下落や貨物取扱量の減少、陸上運送の貨物取扱減少、分譲マンションの販売物件の減少だ。
営業利益は前年同期比15.4%減の99億2千万円。不動産賃貸業は稼働率が上がり、増益となったが、国際運送取扱事業の収益が減少したためだ。
セグメント別では、物流部門は第218期~220期までは順調に増えているが、今期221期では前年より低い。
不動産部門は、物流部門に比べてあまり大きな増減はなく、安定した収益と利益を稼いでいる。
今年2月14日に発表された「第221期 第3四半期報告書」を見ると。
第3四半期連結累計期間(2023年4月1日~2023年12月31日)の営業収益は、第2四半期と同様の理由で、前年同期比 17.0%減の1,924億5千2百万円。
営業利益も同様で、前年同期比12.9%減の157億8千万円。
配当金に関しては、今期の中間配当金は前期より9円増額した50円だった。
期末配当金は、前期より11円増額の60円が予定されており、年間では前期より20円増額の110円となる予定だ。
三菱倉庫は業界最大手であり、約140年続く会社の所有地は含み資産が大きい。
また、米国のCavalier Logisticsグループを買収したことで、三菱倉庫グループの医薬品国際物流ネットワークが拡大した。
コロナ禍では、ワクチンの保管や運送に温度管理が重要だということが、一般の人々も知ることとなった。今後も同グループの医薬品物流は安定した収益を上げるだろう。
三菱倉庫株式会社(東証プライム)
2024 年3月期(2023 年4月1日~2024 年3月 31 日)の予想配当金:1株につき110 円
※そのうち、2023年9月末の中間配当金は1株につき50 円だった。
※三菱倉庫(株)の売買単位は100株。
予想配当利回り:2.39%(2024年3月5日終値現在)
J-REITの3月決算銘柄の分配金、及び3月決算の株式会社の配当金をもらうには、権利付き最終売買日である3月27日15時までに購入しておく必要がある。
最後に、投資は自己責任でお願いしたい。
健美家編集部(協力:野原ともみ)