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金利上昇と不動産価格下落で「ハリボテ大家」に逆風?家賃上昇は遅れてやってくる【最終回】

大家対談/川村龍平×岡元公夫(2度目)さん_画像 大家対談/川村龍平×岡元公夫(2度目)さん 著者のプロフィールを見る

2024/1/4 掲載

川村龍平さんと岡元公夫さん、元メガバンカーのお二人による対談の最終回です。前回は洪水や地震のリスクには、これからさらなる注意が必要というお話や、建築技術の向上による耐用年数の考え方の問題点をご指摘いただきました。最終回は、低金利政策の中、これから大家さんはどのように対応していくべきかなど、必見の内容です。

どんぶり勘定ではダメ!来年はハリボテ大家がやられてしまう年に

川村龍平さん
繰り返しますが、日本の低金利政策は限界になってきていると思います。不動産投資家自体が投資できない状態なんですから。

岡元公夫さん
だから金利をもう少し上げて、日本経済をまず正常に戻していかなきゃいけないわけですね。

川村龍平さん
物価上昇率が2%を超えている中で、金利が1%ぐらいまで上昇しても、そんなに一生懸命日銀は国債の買い取りはしませんと、言っているんです。ということは早晩市場での10年国債の金利は1%を超えそうなわけですよ。もう目に見えているんです。

そうなってくると、下の表のように2023年は1年で長期金利が0.2%から0.95%まで上がっているわけですから、2024年は1.2%どころか、下手したら1.8%とか2%とか、そこまでいってもおかしくないと思うんです。そんな時代にもう来ているんですよね。

2021以降の長期金利の動向

2021以降の長期金利の動向

川村龍平さん
だから大家さんは、今から借入金利が上がっても大丈夫な体力にしておかなきゃダメなんです。返済率が50%に近い人とか、借入金利が高い人、不安定な入居率の人なんかは、何もしていないと潰れちゃいますよ。

キャッシュフロー分析を細かくやらなきゃいけない時代に来ているんですよ。でもそれを何回言っても、大家さんの7割ぐらいはどんぶり勘定なんですよね。

岡元公夫さん
それはなんとなく雰囲気でやっている、銀行が貸してくれたから買っちゃうような人のことですよね。

川村龍平さん
そういう雰囲気だけの人のことを、私「ハリボテ大家」って呼んでいます。私は純資産を重視しているんですけど、そういう人は総資産は増えているものの、たくさん借金もしているから、総資産とイコールくらい借金もあるわけですよ。

セミナーなんかでは、そういうハリボテくんになっちゃだめだよって言っています。2024年はそのハリボテ大家がやられる年じゃないかな。「ハリボテ大家やられ元年」になるかもしれません。

岡元公夫さん
長期金利が確実に上がっているし、マイナス金利も0%かちょい上ぐらいにはなりそうですよね。そうして徐々に金利が上がると、今度は反比例して不動産価格が下がるじゃないですか。

今まではキャッシュは回らないけど、簿価より高く売れるから結局利益が上がったっていう、好循環だったんですね。

でもそこにバブル崩壊の時みたいな逆転現象が起きてしまうとしたら、私も2024年は大家さんのターニングポイントになる可能性があるんじゃないかと思っていますね。

■遅効性の高い家賃はインフレの最後、5年後に上がってくる

岡元公夫さん
インフレが進むおかげで、物価と同じように家賃も上がればいいんですけど、これは多分にタイムラグがありますからね。

川村龍平さん
そうなんです。スーパーに売っているような油や米、水とかって一次産品と言うんですが、これらはすぐに価格が上がってくるんですけれども、家賃って、もう本当に遅効性がすごく強い商品で、最後にやっと上昇してくるしろものなんですよ。

リフォームの見積もりを取ると、ことごとく高くなっていますよね。ガソリンやいろんな住宅設備なんかが上がった後に、家賃が上がるんです。他の物は上がるんですけど、家賃って悲しいかな5年くらいの遅効性があるんです。

そうすると、5年間持ち堪えられない大家さんが絶対出てきますから。遅効性でやられるわけですね。こういう遅効性でやられたり、金利でやられたりする大家さんが増えてくる。そうなると「やられ元年」ですよ。

■イールドカーブコントロールによって10年だけいびつな超長期金利

川村龍平さん
為替が200円くらいになったら本当にやばいですよね。イールドカーブカーブコントロールをちょっと緩めて長期金利が1.2%になってくれば、また変わってくると思うんです。短期金利ももうちょっと上がってね。

1ドル200円ぐらいになってきたら、さすがに日銀も色々考えてくると思うんですけどね。そうするとあと残るのは、金利を上昇させるしかないんですよね。アメリカの短期金利が5%で日本が0%、500ベーシスポイント(bp)開いています。長期金利も400bp開いている。

岡元公夫さん
ちなみにベーシスポイントって市場用語なんですけど、金利や株式市場の変動幅、上場投資信託や投資信託のコストを表す単位ですね。1ベーシスポイントが0.01%です。100ベーシスポイントっていうのは1%になるわけですね。

川村龍平さん
イールドカーブコントロールで、日銀が今まで市場から買い上げられていた国債がそのまま残ることになる。それから短期金利も誘導目標をマイナスからプラスへと変更することになってくると、金利が上昇します。

こうして金利が上がると何が起きるかというと、金利上昇に耐えられなくなったゾンビ大家が増えてくるんです。もちろんゾンビ企業の大量倒産もあります。

でも超長期金利を見ると、実はもう上昇しているんですよね。10年だけ歪んでいて抑えられていますけど。

イールドカーブコントロール

イールドカーブコントロール(再掲)

20年とか30年の国債は、「超長期国債」っていうんですが、それはもうちゃんと上昇しているんですよ。これが普通のマーケットなんです。10年だけ歪んでいるんですよね。

岡元公夫さん
これは日銀がイールドカーブコントロールという政策をやるとき、10年だけ抑えるっていう風に決めていたからなんですよね。そのおかげで10年だけいびつに下がっていました。新しく植田さんになってそれを徐々に上げているんですよね。

川村龍平さん
でもまもなくイールドカーブコントロールをなくすって噂もありますから、そうすると20年30年みたいに上がるわけです。

そしてこれが上がると、短期金利もタダでは済まされないわけですよ。マイナスから0.5ぐらいまで上がるんじゃないかな。そうすると、ギリギリでやっていたメガ大家さんも潰れますよ。

■生き残るのは東京だけ!?地方不動産は暴落するのか

川村龍平さん
今まで金利上昇していないがために不動産相場が高値圏でした。これから金利が上昇すると、いくぶん需給にもよりますけど、地方の不動産相場は暴落しますよ。

よく日本の不動産は3つの部分に分かれているって言われています。都心3区とか5区。それから東京23区+αと大阪、仙台、福岡などの大都市圏。そしてその他の田舎。

田舎の不動産っていうのは、これからどんどん下がっていくでしょう。日本の人口が減るから。どんどん出生率が減って、人が亡くなっていくと、人口も減っていきますよね。

10年、20年後を考えたら、何千万人単位で減っていくわけですよ。どんどん減って7,000万人くらいまで来たら、本当に地方は成り立たないんじゃないかなと思っています。

岡元公夫さん
移民政策をどうするかっていうことを、真剣に考えないといけないですよね。

川村龍平さん
そうですね。ちなみに私、品川区大井町で大きな屋敷を運営しているんですよ。90坪くらいの土地で庭が40坪くらいある高級物件で、家賃が50万円くらいです。そこを外資の社長さんとかに貸しているんですけど、そこは引きがすごく強いんです。

なぜかというと、そういう物件が都心にないから。大井町だと品川からもタクシーで1メーターだし、空港からも近いし、東京駅からもすぐでしょ。六本木ヒルズとかから結構引っ越してくるんです。

いろんな外国人が増えてきていますが、みなさん東京に仕事があるから、やっぱり東京に住みたいって言うんですよね。だから日本に外国人が入ってきても、田舎に行かない。

そう考えると、結局東京だけは生き残るんじゃないかなと思っています。田舎の不動産は仙台や福岡にしても、中心部だけかと。

■来るべきターニングポイント。純資産を確認して金利ストレスチェックをすべし

岡元公夫さん
そろそろまとめに入りましょうか。今までお話ししてきたようなターニングポイントを迎えるにあたって、大家さんは何を心がけていけばやっていけるのか、ということですね。

私としては、まさに川村さんがおっしゃるように、あらためて今の財務内容の実体把握をして、今の自分のポジションはどこにいるのかっていうのを一回振り返るべきだと思います。

そしてストレスチェックをしましょう。金利が上がったり、不動産価格が下がったりした時に、自分はどれだけ耐えられるのかをシミュレーションしておく。そうして今はできるだけ自己資本比率の内部留保を高めるのがいいんじゃないでしょうか。

川村龍平さん
お正月に、自分の「ざっくり純資産」がいくらなのか確認しておくといいですね。今持っている物件は最低市場でいくらで売れて、そこから借金を引いたらいくら残るのか。それが私の言うところの「ざっくり純資産」なんですよ。

これ、固定資産税評価額でやったらだめです。税務関係の人はそれを使いたがるんですけど、僕はやっぱり最低でいくらで売れるか、地方の場合逆転している場合もありますから、実勢価格の低い方でやらないとだめです。高い方じゃだめです。

実勢価格の低い方から借金を引いたら不動産の純資産が出て、手持ちの金融資産との合計が純資産になるわけです。それで自分がどこのレベルにあるのかが分かります。

それから金利上昇のストレステストを必ずやることです。今、借入が1.5%だとしたら、1%上昇して2.5%になったらどうなるか、3.5%になったらどうなるか。それを5%くらいまでやるといいと思います。

さらに1%、2%、3%増しまでやると、自分の分水嶺がどこにあるか、大体分かってくるんですよ。

借金が終わった後が一番儲かる時期

川村龍平さん
つい4~5年くらい前は、どうやってうまく銀行を騙して融資を引くかという融資セミナーが人気でした。あれは私、間違っていると思います。そういうセミナーの話は、本当に緩い時代だけに通じる話なんで、金利が正常化したら、そんなことをやっている場合ではないんです。

徹底的に自主管理をしたりして、超筋肉質体質の人だったらいいけれども、銀行からの融資引き出し系セミナーに行く人って、管理会社に頼む人が多いじゃないですか。そういう人は自主管理に移行して、銀行の借金も前倒し返済で減らすぐらいの心持ちにするのがいいんじゃないでしょうか。

岡元公夫さん
そうですね。それは結果的に自分を守ることになりますからね。

川村龍平さん
退場したら終わりじゃないですか。不動産って、長く続けておくことが大事なんです。でもすぐに売っちゃう人が多いんですよね。僕の知り合いでも9%で新築をやって、5.5%とか、5.9%で売るとか、8%で作って5%で売るような人がいます。

売った時はいいけど、いわば一瞬でグリコのオマケを食べきってしまうようなものなんですよ。そうではなくて長く自主管理をして、美味しく食べ尽くしていかないと。

私は、不動産投資を進めて行くと、3つのステージを迎えると思っています。その不動産投資最後の第3ステージ、すなわち借金が終わった後が一番儲かる時期なんですよ。税金を少々高く取られますけれども、収益はしっかり残りますので。

不動産投資の3ステージ

だけど、第3ステージに行く前にみんな売ってしまうんですよ。そこが一番収益が残るのにね。そこでリノベとかもできるわけですよ。なぜかというと、結構収益がいっぱいあるから、リノベをやって課税所得を下げることもできるから。

例えば最高税率の人の場合、収益が500万だったら250万を税金に払うか、リノベに払うか、を選択するのと一緒なんです。

岡元公夫さん
リノベーションセミナーって、来る人は来るけど、来ない人は来ないですよね。

川村龍平さん
そう。岡元さんは古い建物のリノベーションを結構なさっているじゃないですか。そういうことをやる大家さんというのは、ほんの一部なんです。練れた不動産の人。

不動産は奥が深いから、そういうのを見据えてやらないと、表面的なところで考えていると、上っ面の収益だけもらって終わっちゃいます。やっぱり不動産の収益は骨の随まで食べつくして、初めて産まれるものなんです(笑)。

岡元公夫さん
そうですね、私たち不動産投資家はそういう精神を持っておきたいですね。今日はありがとうございました。

川村龍平さん
こちらこそ。また語り合いましょう!

年末大家対談、これにて終了です!

ご覧のようにホワイトボードを使って細かくお話しいただきました。新春大家対談、これにて終了です!

(編集後記)
元メガバンカーの投資家であるお二人に、日本経済の中で置かれている大家さんの現状と将来についてお話いただきました。限界に来ている低金利政策の中、これから大家さんはかなりしっかりした経営判断を迫られていきそうですね。冷や汗をかいている大家さんも多いのではないでしょうか。お二人とも、貴重なお話をありがとうございました。(担当:T)
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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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