中古の一般戸建住宅を購入、必要に応じてリフォームを実施したうえで貸家として運用を行う築古戸建投資。
最近不動産投資を始めた人、またはこれから始めたいという人で、とりわけ若い世代や自己資金が豊富でない人に人気の投資手法である。
今回は、そんな築古戸建投資を戸建のプロとして行うらいおん大家(@rai703rai)さんに話を聞いた。
らいおん大家さんは、愛知県在住の30代前半のサラリーマン。本業のリフォーム業で培ったノウハウを活用しながら3戸の築古戸建を運用し、月に22万円の家賃収入を得ている。また、三重県鳥羽市にて0円で取得した4戸目の築古戸建を、1棟貸しの旅館として再生させるプロジェクトにも挑戦中。
ほかにも発信者、インフルエンサーとしての顔も持ち合わせており、SNSにて築古戸建投資のリアル、購入・運用の上で気をつけるべきこと、リフォームのビフォーアフターや前述の0円旅館プロジェクトの進捗などの発信も行う。
Twitterのフォロワー数約1万2千人を誇るほか、最近では音声配信プラットフォーム「voicy」でも自身のラジオ番組を持ち、2千人超のフォロワーと累計24万回の再生回数を獲得するなど活躍の幅を広げている。
らいおん大家さんが不動産との接点をもったのは大学卒業後、新卒として大手リフォーム会社に入社したことがきっかけだった。特に不動産やリフォームへの関心が強かったわけでもなく、就職活動を通じて縁があったからだという。1社目では一般住宅や店舗などのリフォームやリノベーションなどを1年半ほど経験した。
その後知人のリフォーム会社へと転職し、区分マンション、一棟アパートや戸建貸家といった収益物件のリフォームも数多く手掛けるように。現在は物件情報の仕入れ、調査からエリアマーケティング、入居付けサポート、ステージングや写真撮影といったことまで1人でこなしているという。
「大家さんの物件のリフォームを手掛けると、その部屋にどんどん入居がついていく。たくさんの成功事例を目の当たりにして、自分でもやりたい!と思ったのが不動産投資をはじめるきっかけでした」
1戸目を取得するハードルは高い
リフォームのプロでもガクブルだった
初めての物件取得は今から約3年前、ポータルサイトにて600万円で売り出されていた隣県の田舎エリアの戸建。リフォーム費用等から逆算して200万円の指値を入れて、400万円で購入した。購入費用およびリフォーム費用等は日本政策金融公庫にて借入を行った。
「お客様の成功事例を散々見てきたのに、今から自分が借金をして、田舎の中古戸建を買おうとしている現実がいざ目の前に迫ると急に怖くなってきて、キャンセルしたいとさえ思いました。やっぱり最初の一歩を踏み出すときは不安がありました」

購入後は屋根の補修、駐車場の拡張、室内壁、床の貼り替え、洗面化粧台や水栓の交換などのリフォームを実施。和室を全面紫色に塗装し、相場より高い家賃でリフォーム完成前から入居募集するなど、チャレンジングな試みを行った。その結果、和室のデザインを気に入った外国人の方の入居があっという間に決まったという。
入居から2年半ほど経つが一度のクレームもなく、所有していることを忘れるほど安定稼動している。月の家賃は7.1万円で、購入費用とリフォーム費用から算出する利回りは15.9%だ。
当初は家賃相場からの想定で12%程度の利回りを見込んでいたが、リフォームによって相場より1.5万円高い家賃での入居付けを実現した。
らいおん大家さんは不動産投資を行う上でのモットーとして、建物を健康な状態に保ち、長期に渡って入居者からのクレームが出ないように最初にしっかりと手をかけることを第一優先している。
「外壁や床下の配管など、建物の状態が良好であることを確認したうえで購入しました。水栓や洗面台などまだ使えたし、屋根の一部補修などは正直、目をつぶりたい気持ちもすごくありました。でも、どうせ何年後かにやらないといけないのなら、最初に全てやってしまった方がいい。結果的にコストも抑えられるし、入居者のクレームや退去などのリスク低減にも繋がります」
2戸目の戸建は、知り合いの不動産仲介会社からの紹介で取得。人気のないエリアで建物も古く、「らいおんさん大家さんだったらいくらで買いますか?」と言われるほど。周囲も誰ひとり買いたがらなかったため、チャレンジのしがいがあると購入を決意。
修繕費用の見積もりや収支計算をした上で弾き出したうえでの現実的な購入金額として「38万円」を提示したところ、すんなり通ったため現金決済した。

取得後は屋根、外壁、配管、内装や設備など、あらゆる箇所に手をかけた。総額430万円のフルリフォーム、もといリノベーションによって、まるで新築のように再生。費用はリフォームローンでまかなった。
戸建賃貸の相場もないような田舎のエリアで、家賃7.5万円と強気の募集を行なったが、こちらも入居付けはスムーズだった。
「利回りは約19%ありますが、リフォームローンの期間が7年と短いため、毎月の手残りは微々たるものです。手をかけすぎだと思われるかもしれません。でも、これ以上修繕でお金が出ていくことも、手がかかることも当分はありません。7年後からはキャッシュマシーンとして活躍してくれると思います」

ちなみに、よく勘違いをされるそうだが、らいおん大家さんがDIYでリフォームをすることはないという。本業で培ったリフォームの企画力や現場監督としてのスキルを活用して、業者への的確な指示出しと費用対効果の高い材料選定により、効果的なリフォームを実現しているそうだ。
「自分はやらないだけで、決してDIY否定派ではなく、むしろ推奨派です。DIYを通して多くのことを学び、成長できると思います。ですが、建物の構造に関わる部分、電気や水道などのライフラインだけは、入居者の安全のためにもプロに任せることをおすすめします」
修繕を最初にやりきるらいおんスタイル
大儲けしない代わりに利回りもブレない
近年、SNSなどで『ボロ戸建を数万〜数十万円で購入して、利回り何百%達成!』という発信を見かけることも少なくない。そこを目指して戸建投資への参入を検討する方もいるだろう。だが、「戸建で大儲けは難しい」とらいおん大家さんは断言する。
「利回りというのは、どこをどう切り取るかで全く変わってきます。修繕リスクのある築古物件は特に、今日の利回りと明日の利回りが全く異なるということも有り得ます。はじめから手をかけておけばトータルコストも少なく、クレーム等もなかったのに…というケースを本業でもたくさん見てきたからこそ、最初にしっかり手間と費用を掛けて、細く長く収益をあげていくスタイルで投資をしています」
少額、現金で始めることもでき、若者や初心者にも人気の築古戸建投資だが、購入から再生、そして実際に稼働するまでにはいくつものハードルがある。実際のところ、買ったはいいが途中で手に負えなくなって辞めてしまう人も少なくない。リフォームのプロであるらいおん大家さんをもってしても、決して初心者向きで簡単な投資とは言えないという。だからこそ、一連のプロセスを通じて不動産投資家として成長できるし、知識や経験はその後の賃貸経営にも活きてくる。
では、これから築古戸建投資をはじめたい初心者が、修繕によってきちんと再生し、運営できる物件を手に入れるにはどうすればよいのだろうか。
「まずは、ひたすら物件を見に行くことです。最初はちんぷんかんぷんでも、とにかく数を見る。ここで大事なのは売家だけでなく、リフォーム後の完成した物件も見ること。先輩大家さんが物件見学会の案内をSNS等で告知していたら、ぜひ参加してみましょう。ボロボロの家とリフォームで再生した家の両方を見ることで、次第に物件の状態の良し悪しや必要なリフォームを見極める目が養われ、失敗しにくくなると思います」
リフォームのプロとしての強みを活かしつつ、低リスクで長期目線の不動産投資スタイルを実践するらいおん大家さん。後半ではSNSで積極的に発信を行う理由や、現在取り組み中の「0円空き家」プロジェクトについてお伝えする。
取材・文 Tamaarai
健美家編集部(協力:
(たまあらい))