こんにちは。富治林希宇(ふじばやしねがう)です。
前回、「 地方×築古×再生 」の話を書きましたが、今回はその続きです。今回は、「180万円のアパート」を買った内容です。戸建てではなくアパートで、僕が手掛けた再生物件の中でもトップクラスで苦労しました。
参照:積算評価の低い地方物件の融資額をUPするために実践したこと。地方×築古×再生をなぜやるのか?
■物件との出会いから購入まで
「180万円でアパートを買った」というと、「そんな安い物件なら、非公開物件を特別に紹介してもらったのではないか」と思う方もいるかもしれませんが、普通にインターネット上に公開されている物件でした。
安く売られていた理由と、売れ残っていた理由ですが、それこそまさに、地方築古再生の特徴だと思っています。
1)安く売られていた理由
売主さんはアパートを収益物件としてではなく、「古家付き土地」として売りに出していました。土地の積算価格は300万円だったのですが、そこから更地にするためのアパートの解体費用も考慮して、180万円という値付けをしていたようでした。
これがもし、普通に「180万円、利回り100%超えのアパート」としてポータルサイトに掲載されていたら、たとえ老朽化した建物といえども、多くの投資家さんから買付が殺到したと思います。しかし、そうではなく土地として売りに出されていたことで、市場に残っていました。
また、専属専任媒介契約であった仲介業者さんは実需向けの不動産仲介をメインに扱っていたので、収益還元での値付けをされていませんでした。地方だと、こういうケースを見ることがあるので面白いと思っています。
2)物件は全空で、中も外もものすごい状態…
価格は180万円でしたので、融資は使わず自己資金で購入しています。もちろん、全部屋空室の状態でした。
物件概要:1K×6戸(全部屋空室)
金額:180 万円
利回り:工事後約30%
積算評価(土地値):300万円
※数字は概算
【180万円アパートの外観】
利回りだけを見てみると、お宝物件を買えたように見えますが、そこは180万円という格安物件で本当に苦労が絶えませんでした…(汗)。
外観からしても、「老朽化していて再生が大変そうだな」という感じだったのですが、中を見てさらに驚きました。雨漏りで天井は抜けている、床も抜けている、壁は剥がれていて、剥がれた壁の素材が床に散らばっている…などなど。本当にボロボロの状態でした。
3)書類が見つからない…。売主さんとは文通でやりとり
加えて大変だったのは、書類関係や売主さんとの交渉です。まず登記識別情報通知(または権利書)や登記簿謄本がなく、建物登記がされていないアパートでした。
法律では建物が建築されてから1ヶ月以内に登記をしなければいけないことになっているのですが、現実には登記しないまま放置されている建物も存在し、今回の物件も、そんな未登記建物のひとつでした。
さらに苦労したのは売主さんとの連絡方法。携帯や固定電話をお持ちではなかったので、ご自宅への訪問もしくは手紙で連絡する必要がありました。不動産仲介さんも、直接会えない時は手紙でやり取りされていました。そのため、書類の状況確認や契約の段取りも手紙で連絡を行いました。
4)必要以上の指値はしない!
購入する時、指値交渉等は一切しませんでした。それどころか、登記にかかる費用などは、全て僕の方で負担しました。リノベーション費用や登記にかかる費用を理由に、価格交渉をするという選択肢もありますが、今回の物件は180万円という破格の値段です。
また、普段なら物件の状況や売却の経緯なども詳しく確認するのですが、今回はそれもせず、すぐに購入を決めました。この理由も、文通により意思疎通に時間がかかることや、物件をしっかり抑えることを考量したためです。
詳しい事情を確認している間に他の人に買われてしまうかもしれませんし、「面倒なことをするぐらいなら売りたくない」と売主さんにヘソを曲げられてしまうリスクもあります。
・さらに1度のお取引から継続したお取引(また売りたいと思ってもらえる)
これらのためには必要以上の指値、細かな確認等は行わないほうがいいと思っています。これは不動産ファンドにいた時も同様でした。
5)購入時にリスクヘッジとして行ったこと
とはいえ、最低限のリスクヘッジとして、以下の2点を実施しました。
1点目は、知り合いの不動産仲介会社さんに仲介に入ってもらいました。売主側(元付)と買主側とそれぞれ仲介が入るのですが、その買主側の仲介に、関係性のある不動産仲介会社さんに入ってもらいました。
取引実績があって信頼が置けたこと、現地の情報に精通していたこと、仲が良かったのでコミュニケーションもスムーズに取れること等から、今回の仲介をお願いしました。もちろん、元付の会社さんに断りを入れた上でです。おかげで契約までの負担はかなり軽くなったと思います。
2点目は、東京で活動する知り合いの司法書士さんに登記の手続きをお願いしました。今回は通常の所有権移転だけでなく、未登記建物の登記も必要です。交通費なども含め費用は上がりますが、リスクを鑑み信頼のおける司法書士さんに対応を依頼しました。
今回の物件を再生するにあたっては、今まで培ったスキルだけでなく、人脈もフル活用して取り組みました。不動産投資をするにあたっては、信頼できるビジネスパートナーとチームを組むことがポイントだと思います。
■リノベーションで見事に再生!!
そんな方たちの助けもあって、無事に物件を購入、早速アパート再生に取り組みました。その結果、アパートは生まれ変わりました。
【アパートの外観】
After(再生後)
リノベーションにはトータル500万円以上かかりましたが、安く直して安く貸す、ではなく、地域によりよい建物を生み出すために、自分なりの工夫を凝らしました。
デザインにあたっては知り合いのホテル事業を展開する方とコラボし、室内にカーペットを敷設等、新しい取り組みもしました。
【アパートの内装】
リノベ後に早速募集を開始したところ、1K×6部屋の空室が、2か月もせず満室になりました。前回の物件で空室が長引いた反省を生かし、現地の不動産屋さんにたくさん相談したことも功を奏しました。
各部屋約3.5万円で入居が決まったので、年間収入は252万円(3.5万円×6部屋×12か月)となりました。
■リノベーション費用の考え方
最後に、僕が物件再生にかける費用の考え方について書きます。
今回のように大掛かりなリノベーションが必要な場合、いくらまでリノベ費用としてかけて良いでしょうか?僕の場合、その価格は「出口価格」、つまり売却想定価格から逆算して算出しています。
例えば、今回の物件のスペックであれば、周囲の他の物件の売り出し価格から考えると、満室なら利回り15 %で売却が見込めます。そうなると、年間収入が252万円ですので、252万円÷15%=1,800万円が出口価格になります。
物件価格が180万円、購入諸費用も入れると300万円程。そのため、1,800万円-300万円=1,500万円が最大でかけても良いリノベ費用となります。
実際は、売却時に残したい利益や、売却にも諸費用がかかったり、市況が変化したりするので、もっと余裕のある金額で工事予算を組みますが、ざっくりどのくらい予算があるかな?と想定して、その予算で取り組めそうなら買う、取り組めなさそうなら買わない、の判断をしています。
ここの判断軸に柔軟性(幅)を持たせていくのがキモだと思っています。
このような「出口価格」を意識した予算組みの考え方は、不動産業界で働いている時に身につきました。やはりサラリーマン時代の経験は、自分の投資活動にすごく活きていると感じています。
【リノベ費用の計算まとめ】
出口価格から考えて捻出できる費用を想定することを心影ています。
・売却価格 : 1,800万(252万÷15%)
・購入価格 : 300万
→購入後、かけられる予算は「1,500万(売却価格―購入価格)
皆様の参考になれば幸いです!