定期的に競売セミナーを開催し、日々、競売の相談を受けているドクターKである。今回、競売で公開されていた一棟アパートの競売事例をご紹介する。
紹介する物件は、首都圏内の一棟アパートである。裁判所から公開された資料では全10室賃貸中の満室である。
一般的に、競売物件の一棟マンション、アパートは大家が賃貸管理を怠り、空室が目立つ物件が多い。しかし、今回紹介する物件は築年数が36年であり、築古にも関わらず、全10室すべて賃貸中である。
賃貸管理がしっかりと行われていた。但し、裁判所から公開されていた資料は満室であるが、落札した時点では、その間にタイムラグがあり、賃借人が退去する可能性があるため、ご留意頂きたい。この物件を参考頂き、このような競売物件もあることを理解頂けたらと思う。
1.物件概要
(1) 所在地
物件がある市町村は、南関東の約14万人が住んでいる比較的に大規模な都市である。駅周辺は数年前から都市開発が進み、大型のショッピングモールやデパートが点在している。
この物件は最寄りの駅までは約1km離れており、徒歩でも移動可能な距離である。目の前には国道があり、少し騒音が気になるが、スーパーやお店が建ち並んでいる。
(2) 物件概要
物件は、土地が436u、建物の床面積が410uであり、合計10室である。築36年、2階建ての木造アパートで、駐車場はいくつかある。外観を確認するとオレンジ色であり、数年前に外壁塗装している。

(3) 間取り、室内
間取りは2DKが10室ある。1室の広さは約40uであり、2人暮らし、ファミリー向けの間取りである。

以下、室内の写真である。賃貸中であるため、いくつか荷物が置かれ、生活感が感じられる。

2.物件詳細
(1) 賃貸契約の内容
裁判所の公開資料には賃貸契約の内容も記載され、以下、賃料である。
各部屋の家賃は、40,000〜50,000円である。賃料以外に駐車場代が1台6,000円である。もし退室しても、最寄りの駅までは徒歩圏内であり、駐車場、近くにスーパーやお店もあり、適切な賃料であれば、募集に苦労しないだろう。

(2) 関係者のコメント
裁判所の公開資料には、債務者、賃借人の関係者のコメントが記載されている。以下、その一部の資料を添付する。中身を確認すると特に問題があるようなコメントはない。
通常、10室もあると、水漏れや壁に穴があるなどの欠陥のコメントを見受けられるが、逆に一切ないのも珍しい。しっかりと、賃貸管理が行われていたのだろう。

(4) 物件評価の金額
裁判所から依頼された不動産鑑定士による競売の基準価格は以下である。
29,040,000円
上記の金額は、裁判所から依頼された不動産鑑定士によって、査定される。この金額は、一般流通市場の価格よりも安く設定される。理由は、この金額が一般流通市場よりも高いと誰も入札せず、競売自体が成り立たないためである。
3.落札結果
(1) 落札結果
落札金額は以下である。
42,147,200円
(2) 利回り
利回りを計算する前提として、裁判所から公開された賃料が継続可能であるとする。満室時の月額の家賃収入は418,000円である。結果、表面利回りは約11.6%である。
落札金額 42,147,200円
月額家賃収入(満室時) 417,000円
諸費用 1,200,000円(登録免許税や不動産取得税などの概算金額)
表面利回り 11.6%
4.最後に
本物件に関して、首都圏内の一棟アパートであり、満室利回り11.6%で落札されている。
競売物件において、11.6%だと少し物足りかもしれない。しかし、裁判所から公開された資料では満室であり、メンテナンスも実施されている、かつ、立地的に悪くなければ、見方によっては、悪くない物件だと思う。このような物件もあることをご理解頂き、ご参考頂ければと思う。
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