今年は2棟の新築を建設していますが、そのうちの1棟が3月22日に竣工し引渡しを受けます。3LDKが5戸と2LDKが9戸の合計14戸という間取りで、5階建てエレベーター付きの物件です。
こちらの土地情報をいただいたのは昨年の3月頭でしたが、当初は全て単身の28世帯のプランとして紹介していただいたものを、オイラが世帯数を半分にしてオールファミリープランに変更依頼しました。
なぜ、世帯数を半分にして単身からファミリーに変更したかと言えば、理由は二つあります。
一つ目は、オイラの所有物件全体のポートフォリオでは単身向け間取りの比率が高くなっており、ファミリー向けの間取りを加えたいと考えていたこと。
もう一つはここ数年はファミリーの間取りで特に2LDKの入居率が良いことが所有物件のデーターから顕著だったことです。実は2LDK企画用の土地を探していたタイミングでもありました。
さらに、敷地面積が125坪とそれほど広くないにもかかわらず、角地だったことから駐車場が13台ほど取れました。そこで、ファミリー向けに変更した方が賃貸経営が安定すると考えたのです。
結果としてはオール単身プランよりも表面利回りは若干下がりましたが、長く保有するには良い企画になったと思います。
■間取りと入居期間の関係について
間取りについては一般的には広くなるに従って長期間入居するとのデーターがありますが、実は一括りにそうだとは言えません。
転勤族の多い中核都市の中心部と地元企業に勤める人が多い地方都市の郊外では比較することも適当ではありませんし、当然ですが政令指定都市の中心部になると転勤族が多くなりますからファミリー間取りの物件でも実際には入居スパンは短くなります。
一方で地方都市で転勤をしない地元企業の勤め人が多い場合には1LDKでも10年以上住むことも稀ではありません。過去に築10年の中古で購入した物件には21平米1Kの間取りに20年以上住んだ女性がいました。
購入し引き継ぎした賃貸契約書をみたら22歳から住んでいてオイラが購入所有してから10年後の42歳で退去された入居者さんがいました。
その方とはオイラが物件を見に行った際に偶然エントランスで話をしたのですが、「こんな立地が良い場所はなかったので引っ越しは考えなかった」と言われました。
しかも、その入居者は平成元年の新築時に結んだ契約家賃の4,7万をオイラが購入した平成10年当時としても高い家賃を退去する平成20年までの20年間も支払い続けて住んでくれてました。
購入した当時は他の部屋の募集家賃は管理費込み3、5万でようやく決まるような状態でしたから随分と高い家賃を払い続けてくれたものです。
このような学生狙いの1Kなどでも専門学校生なのか大学生なのかでは当然入居スパンが倍も違いますし、稀に専門学校を出てそのまま就職して住んでくれる人もいますから平均値はあくまで平均値としてみてた方が良いでしょう。
オイラは雑な性格なので正確なデーターはとっていませんが30年ちかく賃貸業をやっている感覚では入居期間のイメージとしては以下のように感じています。
1K・1DKでは 半年〜2年半
1LDKでは 1年半〜4年
2LDKでは 2年〜5年
3LDKでは 3年〜
しかし、実際には3LDKでも1年足らずで出ることもありますし、先の例のように1Kでも20年住んでくれる人もいるのでそれぞれ立地もエリアも間取りも違う個別の大家さんには当てはまらないことも多いと思います。
どんな間取りでも先に記載した20年も住んでくれた女性のように長く住んでもらえば入れ替え時の空室ロス期間や募集時の広告費、退去後の清掃費とリフォームの費用の率は下がりますのでできるだけ長く住んでくれることを願うばかりです。
■先月、竣工1カ月前に満室になった新築マンション
少し話が変わりますが、平成元年から平成30年くらいまでは家賃は下がることが前提でした。つまり、最初の契約家賃で長く入居してくれればそれだけ利回りも落ちずにすむというデフレの家賃の時代でした。それが変わっていることを最近、感じています。
今月引き渡しのファミリー新築について、1年前の企画時点での家賃設定よりも平均で2千円ほど募集家賃を上げて募集してみました。すると、竣工1ヶ月前の2月中旬で申し込みベースで満室になってしまいました。
戸数が14戸と少ないこともありますが、これは過去に手がけた30棟以上の新築のなかでも今までで一番早い満室物件です!!まだ外側がシートで覆われていて、室内もまだ完成形が見れない状態だったにもかかわらずです。
これは単純に募集の家賃設定が間違えていた可能性もありますが、より深掘りしてみると、企画をした時点からこの1年間で進んだ家賃のインフレ率を見逃していた為とも考えられます。
昨年企画した時点でも過去の平均よりも高めで家賃を設定していましたが、それ以上に進んでいるということです。これを想像出来ませんでした。この家賃のインフレがどこまで進むかわかりません。
一つ言えるのは、今年の募集時、2年以前に竣工した物件については退去がある事に5%から10%ほど募集家賃を上げていますが、どこも交渉も入ることなくすんなりと入居が決まっています。
令和になってから、特にコロナになってからはインフレが顕著となり、家賃は入居者が入れ替わるたびに上がる(上げられる)時代に入ったといえるでしょう。
今年春の竣工物件の募集家賃をポータルサイトでよくよく調べてみますと、ファンド系や力のあるデペロッパーの新築物件ではオイラの想像のはるか上をいく家賃で募集されてます。
オイラの物件の家賃を多少上げたとしても、これらの物件と比較すれば割安に見えるはずです。いよいよ新築の建築費高騰や土地値の高騰を経て、家賃も上がり始めたたということです。
■古い水夫は新しい水夫から新しい海を学ぶ
14年前に55平米のハイグレード2LDKを企画新築した際、当時の管理会社の部長さんは「管理費込みで7万円が上限だ」と言いました。それを創意工夫で8万平均でも満室にできたことが成功体験となり、その後も徐々に家賃を上げることにチャレンジしてきました。
直近では55平米で2LDKは管理費込み10万円まであげています。しかし、それでもすぐに埋まってしまいました。そこが上限だろうと勝手に思いこんでいたオイラの頭は、インフレの時代について行けていなかったということです。
それをオイラに教えてくれたのは若い不動産投資家でした。
どうすれば賃貸経営が安定し、かつロスが少なくなるかを常に真剣に考え続けなければ、たちまち時代に置いていかれます。
今からおよそ半世紀以上も前、当時中学生のオイラが憧れた吉田拓郎がこんな歌を歌っていました。「古い船をいま動かせるのは古い水夫ではないだろう」。
まさに古い物件をいま蘇らせて稼働させるのは老いた大家ではなく若い大家さんです。今の時代に即応した賃貸経営も、若い大家さんでなければ出来ないでしょう。
その吉田拓郎は77歳、オイラも65歳になり、とっくに古い水夫になってしまいました。古い考えは常に若者にとって変わられ、時代は動いて新しくなります。古い水夫は新しい水夫から新しい海を学んでいく必要があるのです。