昨今は金利上昇、為替動向、人口動態、エリア毎の賃貸需要など様々な環境変化により、不動産投資家における判断はこれまで以上に混沌としてきた感がある。
そのような状況下でも、現在の運営にない新たな物件プロファイルや取り組みに挑戦していくとしたら、そのときこそ投資家として勇気が要るところでもあり、新たな醍醐味を味わえるところでもあるだろう。
今回、2024年の前回ニュース記事(区分マンション20戸から一棟モノへシフトチェンジ!~投資対象が一棟に変わった理由~)で取り上げた投資家、武田 潤氏(仮名)に再び話を伺い、2025年の取り組みで見えた更なる”ギアチェンジ”についてお伝えしたい。

2025年の取り組みは「進化する二刀流」
前回ニュースで区分から一棟アパートにシフトチェンジした局面を取り上げたが、2025年は更なる飛躍として首都圏での「土地から新築」で、RC造一棟マンションにも着手したという。2026年の5-6月には完成予定だが、発生する課題に対処しながら進めているという。
「無事に着工しましたが、油断はできません。工事に入った段階で地盤の強度に関する現場の新たな状況が判明し、良好な地盤まで到達させるには杭の長さをかなり伸ばす必要があると分かりました。見積内容としても1千万円ほど増加しましたが、利回りのバッファーとしては想定内で進捗しています。」
前年の区分マンション複数売却による融資付け環境整備も功を奏し、2億円超の融資付けにも首尾よく成功した。
「区分マンションの資産整理をする前までは、金融機関に飛び込んでも、こちらの望むような見方で個人と法人を連結で評価してもらうことが困難でした。個人保有の区分マンション20戸を法人が一括借り上げし、個人と法人の双方で節税対策をしていても、『個人も法人も利益が少ないですね』と言われたこともあります。
融資先に関して、区分のみに取り組んでいた時期にリフォーム用途で調達した信金さんともお付き合い増えるなど、間口も広がりました。また、保証協会付融資についてこれまで避けてきましたが、ある認定を取ることで自治体による保証料の補助制度も利用するなど、以前より融資に対するベクトルの向け方は多様化しました。」

区分マンションでのバリューアップも引き続き取り組み中
といっても武田氏は、区分マンション群もポートフォリオのメインとして運用継続中だ。共用部分における運営費のコストダウンだけでなく、後付けスマートロックの導入や、あるいは専有部分で3点ユニットのセパレート化や設備交換など、積極的な追加投資によって賃料アップとなる取り組みを常に意識している。ある物件では、以前の別ニュースで取り上げた共用部分清掃費用に関する取り組みも進めたそうだ。
「共用部分では、日常清掃の費用を最適化する取り組みも進めることができました。多くの管理会社は再委託先を起用して日常清掃を回すと思いますが、朝のゴミ出しと日中の清掃を切り離そうとすると再委託先が嫌がることが多いでしょう。理解のある管理会社と協業するのがカギです。また、業務を切り分けた後、場合によってはゴミ出しに関する部分を管理組合が自ら動いて契約するなど、ひと手間を惜しまないことも必要でしょう。
専有部分に関して、昨年はファミリータイプをリフォームして売却するという出口戦略を実践できたため、その再現性も期待して新たに物件を一つ買い増したという。
「以前は区分でも単身者向けを第一選択としていたので、最近は狙う物件プロファイルにも変化があったと言えます。また、3点ユニットをセパレートにするなど、リノベ費用に関する相場感や知見も増えてきました。
一方、10年ぶりに退去が発生した関西の物件で、事務所使用もできる物件の3点ユニットにウォシュレットを取り付けました。電気工事士の資格の必要な電源設置などの作業を大家業の大先輩に手伝ってもらいました。次回からは自ら対処できるよう、近いうちに電気工事士の資格を取得したいと思案しています。」

三度目の正直、による念願のマンション管理士
不動産関連の資格にも話が及んだが、武田氏は2025年の暮れに受験したマンション管理士の試験に合格した。既に有する管理業務主任者の資格というアドバンテージと共に今回こそという気持ちで臨んだ結果、速報の合格ラインも大きく超えていたという。マンション管理士の試験も最近は合格率が上がっており、資格の位置付けについても変化があるという。
「従来、マンション管理士には独占業務がないとされてきました。が、直近ではマンションの管理計画に対する認定・審査については独占業務となるなど、資格を取り巻く状況も変わってきました。」
現在も区分マンションは二ケタに達する戸数の運営を続け、武田氏にとっては管理組合活動への関与も重要視する取り組みの一つだ。今回のマンション管理士合格を節目に期するものがあるという。
「実は都内のあるマンションで管理組合活動に再チャレンジしたい物件があります。元々その場所で地主だった人が理事長を務め、かつ実需と賃貸が混在するマンションですが、意図的に身内を理事として固めているような理事会が特徴的です。
まだ知識の少なかった10年以上前にも色々と意見を挙げたところ、理事長が管理会社に言いくるめられている様子と併せて閉鎖的な理事会の雰囲気に阻まれ、当時はそれ以上その状態に切り込むことができませんでした。」
実績を積んで肩書きも揃った武田氏の”リベンジ”が期待されるところだ。

読者へのメッセージと所感
武田氏は、同様にサラリーマン大家として活動するニュース読者を念頭にメッセージも発信してくれた。
「アパート2棟のほうは今のところ順調です。マンションで取り組んだ電動マイクロモビリティ置き場の設置をアパートでも模索するなど、取り組みは相互に役立つことも多いと感じます。そこに新築RCが加わってくる状況を楽しみにしています。
一方で、『管理組合に関与すると区分マンションに割くリソースが割に合わなくなる』と感じる方も多いかも知れません。ですが、わたしは同時に『ほっとけない』という気持ちが生じます。区分マンションは、投資後約20年で大きく値上がりしましたが、一面では規約に基づいた合意形成や透明性が、資産価値の維持・向上につながった結果だと思っています。
一方で、投資用マンションに関してはオーナーの無関心も一因となり、制度が機能せず、結果的に運営が上手くいかないと感じることが多いです。正直このままでは、強欲な管理会社や知識のない理事会に蝕まれ、資産価値が大きく下がるマンションが増えるのではと感じます。
投資家かつ区分所有者の方は無関心になりやすい立場ですが、投資家の視点があるからこそ、管理組合で活動することの社会的意義は大きいと考えています。」
武田氏は更に自らの経験談として、管理会社の入れ知恵によって「外部に居住する所有者は理事になれない」という管理規約の制約を受けた事例にも触れる。
「実需(居住)オーナーの集まりの中に新たに外部居住オーナーとして入っていく時にアウェイ感を伴うのはわたしだけではないでしょう。管理会社としては区分所有者に一致団結されないほうがやりやすいでしょうし、悪く言えばそこにつけ込んで実需オーナー側に寄り添うことで外部居住オーナーとの分断を図ったとも言えます。
管理会社は決して手放しで管理組合の味方をするわけでなく、利益相反することを伝えていきたいところです。が、ご高齢の実需オーナーなど、管理会社を妄信してしまう傾向がある方には、根気よく説明する必要があるように思います。」
武田氏のような、収益物件オーナー側として管理会社をけん制しながら管理組合活動の機微にも長けたマンション管理士という存在は貴重だろう。着実に歩を進める武田氏の更なる展開は、区分マンションオーナーと一棟オーナーの両方にとって参考になることだろう。
執筆:(さんとうりゅうおおや)







