この度の石川県能登半島大震災の被災者と犠牲者の方々へ心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。時間が経過する毎に犠牲者が増えることに心を痛めています。そして1日も早い平常生活への復旧復興を心からお祈りしています。微力ながら寄付をさせていただきました。
また、読者の皆様におかれましては、今年一年間お互いに健康に留意して良い一年としましょう。とにかく、身体が根本の資本です。その資本を毀損しないようお互い生活習慣を良いものとしましょう。
■根室半島沖地震の記憶
地震の報道を見るにつけて思い出すのは、50年前にもなりますが根室半島沖地震を中学生の時に実体験したことです。
当時の発表では震度5強でしたが、地面がプリンを横に揺らしたかのように波打ち、居合わせた公園の傾斜地では地滑りが起き、公園隣の寺社では墓石が次々と倒れました。揺れが収まり急いで家に戻ると、家の中は倒れたり壊れたりしたもので足の踏み場がありませんでした。
故郷の北海道東部は太平洋沖合の千島海溝に沿ってプレートが沈み込み、その歪みを解放するために発生する地震が定期的に起きる地方でした。その後もなんども千島海溝沿いで発生したプレート型地震で、震度5〜6前後の地震に見舞われました。子供の頃に海岸で津波を見た経験もあります。
船に乗っているときにも津波に遭遇したことがありました。岩壁で魚の荷上げ作業中の港内に津波が押し寄せ、3メーター以上も海面が上下しましたが大事には至りませんでした。それはもう本当に単純に運が良かっただけということだと思います。
生まれた時から60歳頃まで住んでいた故郷の自宅があった場所は、海岸近くの地盤が悪い地域でした。地震の度に本棚や茶箪笥が倒れ、漆喰壁も剥がれ落ち、また外壁にはヒビが入る状態でした。
同じ市内でも親戚の家は高台の岩盤の上で、地盤の良いところにあり、同じ地震なのに何時もほとんど被害がありませんでした。強いて言えば神棚の瓶が倒れた程度だそうです。それほど地盤と立地というのは大切なのだと思い知らされました。
日本で不動産を所有する場合、地震のリスクは全国どこでもほぼ確実にあるものです。地震を経験したことのない人もいないでしょう。それなのに普段、意識することが少ないのは単純に内包するリスクから目を背けていたいからなのかもしれません。
■新築一棟物を建てる際の地震リスクへの考え
オイラが不動産投資をする場所として札幌を選んだのは、道内では最も将来の人口減少率が少ないことが一番の理由です。そして、2番目の理由は比較的地震が少ないエリアだからです。それは故郷で何度も地震や津波を経験している身としては必然の選択でした。
しかし、今回の北陸の震災では、地震の専門家が「これまでの研究では説明のつかない地震が起きた」と話しています。活断層やプレートが直下になくても起きるのが天災なのでしょうし、札幌は地震が少ないから大丈夫というものでもありません。
オイラがリスク軽減のために実行していることとして、高層の建物を新築する際は、杭の入らない頑丈な地盤の土地を選ぶということがあります。それは故郷で地震の際に感じた親類の家と我が家の被害の違いの実体験の影響もあると思います。
今まで9棟ほど高層物件を建てましたが、杭が入った事はありません。しかし、だからと言って絶対に大丈夫といえないことも理解しています。
一方、4階建や5階建の新築では建物が横倒れに倒壊するリスクは高層物件よりも格段に低いと想定し、高入居が見込めれば、地盤があまり良くない杭の入る土地でも許容しています。全体からみたら棟数は少ないですが、規模拡大をする過程で戦略的に目を瞑っています。
地盤の悪いエリアで建てているのは主に壁式構造のRC4階から5階建てです。それらはほぼ30平米〜40平米程度の単身向けの間取りになっています。単身向けの間取りは壁面も多くなり、縦横の揺れに対しても耐性が高いと考えています。
耐力壁の壁厚や鉄筋の配筋量は面積に比例して増えるため、大きな空間の間取りでも構造計算上は狭い間取りと同じように地震への耐力を持っているはずです。しかし、昔から「地震には便所が一番強い」と言われるように、柱や壁の多さは地震耐性を上げると考えています。
皆さんもご承知と思いますが、新耐震の耐震基準は震度7程度の地震があっても人命を守るための躯体強度保つことを基準にしているものです。けっして、躯体や設備が壊れない強度を保証する為の基準ではありません。
被災後に躯体の断裂などで人が住むことができない状態になることも充分に考えられますから、新耐震の物件を新築や購入したのだから地震がきても安心などというものでは、全然ありません。
さらなるオイラのリスク要因として、最近の新築物件は1棟あたりの戸数が30戸以上のものばかりになってきていることがあります。1棟あたりの被災ダメージが大きくなるということです。
被災のリスクヘッジという観点では、1棟あたりは小ロットに留め、1棟あたり4戸程度で分散して増やしていくほうが優位なのは明らかです。
なぜそれをしないかと言えば、年々の建築費高騰で札幌市内で小さな規模で建築するのでは利回り採算が合わないということもありますし、中心部になると土地の容積率が高いため、土地値も高くなり上に積まないと事業として成り立たないという理由もあります。
そして、言い訳になりますが、拡大路線で戸数を効率的に増やしていくには、1棟あたりのロットが大きい方が向いているという理由もありました。
■どれだけリスクの想定をしても、想定以上のことは起こりうる
投資で大事なのは、リスクとリターンをどのようにバランスさせるかということだと思います。不動産投資ですと、ざっと思いつくだけでも次のようなリスクが考えられます。
『地震・津波・地滑り・台風・竜巻・火災・老朽化・事故・事故死・過疎化・人口減少・空室・入居者間トラブル・夜逃げ・滞納・企業移転・大学移転・金利上昇・経済ショック・新型の病気・戦争・隕石・ミサイル落下』
それら全ての発生リスクを受け入れても、なおリターンが多く得られると考えるなら、不動産投資をすべきでしょう。(上記の中には発生の確率は限りなく低いものもありますが)
少なくてもオイラは今まではリスクよりリターンの方が多いと考えてきました。そのリスクを受け入れられないなら、上場REITなどの方がはるかにマシです。
しかし、実際に年齢を重ねたことでオイラのリスク耐性は間違いなく下がってきています。今年を転機に、投資の方向性が変わるかもしれません。
国や専門機関があらゆるリスクの想定をしてたとしても、想定以上のことが起きるものだということを我々は経験してきました。
オイラもリスクヘッジとして所有物件すべてに地震保険を満額で掛けていますし、施設賠償責任保険も加入しています。それでも全ての損害損失をカバーすることは全く不可能です。
最悪な場合には負債だけが残ることになります。その覚悟は借入をして不動産投資をしている以上、持っていなければなりません。正月から震災を目の当たりにして自分の不動産賃貸業への覚悟を改めて問われる年初となりました。
重ねて能登半島震災被災地の1日も早い復旧を心よりお祈りいたします。