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築21年でも新築時より家賃3000円アップ!ランドセットを中心に資産を形成、195室所有の【澤藤さん】

不動産投資全般/投資家インタビュー ニュース

2023/11/25 配信

一般に賃貸物件は築年数が経過すれば物件競争力を失い、家賃は下落に向かう。しかしながら、岩手県内に195戸を所有する澤藤勝衛さんが21年前に新築したアパートは全戸平均で3000円も家賃が上がっている。

最大の理由は家事動線に配慮した間取りにあるという。長期にわたって入居者に選ばれる物件はどのような考えをもとにして造られたのか。また、この9月に竣工したばかりの新築の室内、承継した既存物件のリノベーション事例と併せて紹介したい。

21年前に建てたアパートの内観。当時の木造アパートとしては珍しいカウンターキッチンを各部屋に採用。「1人暮らしならカウンターでサッと朝食を済ますだろうと思いましたし、携帯(当時はガラケー)の充電器を置く場所にも重宝するだろうと考えました」(澤藤さん)

「土地を仕入れてアパート新築」に税理士や金融機関は反対 

岩手県内に195戸(アパート24棟、マンション1棟、貸家4戸、区分1戸)を所有する澤藤勝衛さんは2代目大家である。21年前(2002年)から新たに土地を仕入れて新築する「ランドセット」で物件数を増やしてきた。

税理士や一部の金融機関からは「相続対策でもないのに、土地を買ってまでやる必要はありますか」との声もあったが、「工夫がないまま建てられ、ただ網にかかるのを待っている物件」ではなく、「地域に長く求められる物件こそ必要」という信念のもと自ら資産性の高いアパート造りに取り組んだ。

こうして新築されたアパートやマンションは、2023年9月竣工の2棟を含めると19棟にも及ぶ。

「地主系の大家さんの多くは『狼の群れの中にいる羊』だと思っています。いつ食い殺されるかは、狼次第。絵本で読んだことがありませんか。ネパールなどの高地にいる羊は大きな角を持っていて、狼と戦えます。大家業を営んでいくのなら生殺与奪の権を握られない強い羊にならなくてはと考えました」(澤藤さん)

こうした考えに行きついたのも、「遊休土地活用しませんか」と業者に言われるがままアパートを新築し、経年と共に競争優位性が乏しくなっていった父の物件の立て直しに奔走したからだった。

承継した物件の固定比率は81% 滞納者相手に簡易裁判

澤藤さんの経歴を簡単に紹介すると、大学卒業後に今では当たり前となった製販卸一体型のアパレル企業に就職。アパレル販売員を経て、2000年に岩手に帰郷。26歳、青色申告専従者の立場で父が所有する貸家4戸とアパート4棟の管理に携わり始め、その後、大家業を承継した。

当時の家賃収入は1380万円、金利、税金などを含めた固定比率は81%。入居率は87%。業者に管理を任せきりだった築古物件の競争力は弱く、一度退去すると次の入居者が中々決まらない。主のように住み着いていた滞納者もいる有様だった。

そこから管理を自主管理に切り替え、来る日も来る日もゴミの散らかったアパートを掃除。入居者との接点を増やし、コミュニケーションをとる事から始め、入居者の要望を吸い上げていった。

前職のアパレル企業では、現場からの声を商品に反映させるのが早かったそうで、異業種で培った経験を賃貸経営にも反映していった。

ひどい滞納者に対しては訴状を自分で作成し内容証明で送り簡易裁判を起こした。賃貸契約書を過去の例をもとに滞納者を比較的スムーズに退去させる事ができる内容に更新し、裁判で解決した。

また固定費削減に向け、自分で出来る事は修繕を含め何でもやった。決算書3期分を片手に新規の金融機関を何行か回り、金利交渉、借り換えをし、財務内容を徐々に立て直していった。

2002年賃貸経営に携わってから2年目のこと。たまたま所有アパートの隣地が売りに出たことから新たに土地を購入しアパートを新築。これが、澤藤さんが「適地適作」と話す、地域に必要とされる物件造りの始まりだった。

各戸にカウンターキッチン、賃貸住宅に「あったら良いな」を採用

21年前に土地から仕入れて新築したアパート。工期の短いツーバイフォーで施工。半年間の元金据え置き期間に募集をかけ満室スタートとした

上の写真は21年前に澤藤さんが新築した最初のアパートの外観。1K4戸、1LDK2戸が棟内で分かれる内階段仕様。雪国ゆえ、こうした内階段の共有スペースは風除室になる。「賃貸住宅に自分があったら良いなを持ち込んでいます」と澤藤さんも語る。

室内にも「あったら良いな」を取り入れた。トイレ・バスは別で洗面所も完備。各部屋にカウンターキッチンを設置。室内は1K約30㎡(洋室8.7帖、キッチン3.3帖)、1LDK約39㎡(洋室6帖、LD6.7帖、キッチン3帖)、近隣の新築より広さを確保した。

これまで屋根、外壁の塗り直しを2回、設備の更新はしてきたが、間取りは一切変えておらず21年前のままだという。

1Kでも8.7帖の広々した室内。クローゼット、バルコニーも完備

「間取りを作る上で重視したのは、内見者が一目で見て住むイメージのできる空間でした。家具などの配置が簡単に決まる間取りにすれば、退去時の補修にも好都合です。

モノの定位置が決まっているのでクロスの痛み具合も分かりやすく、原状回復費の削減にもつながります。物件は商品で、一度の仕入れで事業の成否が決まるものと思っていますから、仲介会社、建設業者と図面を何度も修正し、建築が始まってからも現場で修正できるところは修正を重ねました」

車社会の地方では駐車場が欠かせないため、駐車場を完備し雪道に慣れない人でも車の出し入れがしやすいよう配置にもこだわった。竣工から21年が経つが、常に満室の優良物件のままである。残債は順調に減り続け、借入の返済は近年中に終わる予定だ。

新築見学会で「餅まき」。近隣住民と入居者の垣根をなくす

澤藤さんは2002年にランドセットで第1号アパートを建てて以降、21年間で19棟のアパート(2023年9月竣工分含む)やRCマンションを用地取得の上で新築してきた。

「ランドセットの場合、良い場所の土地をいかに安く仕入れられるかがポイントになります。土地は減価償却できませんから(※1)」と澤藤さんは話す。

(※1)建物や設備は、年数の経過とともに資産価値(耐用年数)が減少するため減価償却の対象となるが、土地は年数の経過とともに劣化しないため減価償却の対象にはならない。

「実際、18年前にマンションを建てた土地は鑑定士評価の三分の一程度で購入しています。担保評価にすると当然ながら余裕分が出ますから融資も出しやすいですし、返済が進むと、次の仕入れの担保にもなります」

こうした街の中心部や文教地区などの「好立地」の情報は、複数棟を一緒に新築してきた建設業者から持ち込まれることも多いという。長年の付き合いから澤藤さんの好みを熟知した土地提案を得られるまでになった。

さらに20~40%の高利回りの中古物件の購入と売却を挟んで再投資を行い財務に厚みを作りながら、金融機関の融資を受けていった。

新築した19棟に共通するのは、見た目の派手さはないが、生活にストレスのない間取りだ。家事全般を得意とする澤藤さんのこだわりが詰まっている。

「コンセプトは新築を初めて手がけた21年前から変わりません。自分が住みたい物件であること、入居者の生活がしやすいことです。たとえば今年9月竣工のアパートはファミリータイプの間取りが多いため、お子さんの様子を見ながら、家事の際の目線の移動がしやすいよう動線に配慮しています」

以下の写真は2023年9月竣工のアパートの室内だ。

カウンターキッチン横には大容量のパントリーを設置。あたたかみを感じられるよう部屋全体を暖色系の配色でまとめた

昨今の感染症の流行から手洗いの重要性を感じ、ファミリー向けの住戸には玄関を入ってすぐの手洗いができるように手洗い場を作った。また全戸の脱衣所にリンナイのガス衣類乾燥機「乾太くん」を設置した。

全戸にリンナイのガス衣類乾燥機「乾太くん」を設置。室外に洗濯物を干せない、洗濯物を干したくないといった入居者のニーズを汲み取った
全戸で玄関入ってすぐの廊下に手洗い場を設置。昨今の感染症の流行を受けて取り入れた
大型テレビも置けるボードを設置。コンセントは4口にし、ゲーム機器、HDレコーダー、サラウンドスピーカーなどを置いてもタコ足配線にならない工夫を施した

こうした選ばれる建物を作るだけではなく、入居者が地域に早く溶け込めるよう賃貸住宅のお披露目としては珍しい「餅まき」(※2)を開催。3年前にアパートを竣工して以降、近隣住民を招いた新築見学会と併せて行っている。

(※2)「餅まき」とは、家を棟上げする際に「地域の人に福を分ける」「施主家族の災いを払う」などの目的で行われてきた。施主らが屋根の上などから餅やお菓子などをまいて近隣の住民らが拾う風習

2023年9月竣工アパートでの「餅まき」風景。近隣住民約約70人が参加。大人に混じって餅やお菓子を拾う初めての体験に、子どもたちも終始笑顔を見せていた。開催案内は地域の回覧板で告知

「子育て世代をターゲットとしたアパートですので、この地域に新規参入する入居者さんが早く地域に馴染んでもらえるよう、人同士のつながりを深める餅まきを開催しました。

また、物件の完成見学会というと業者の方や大家さんが中心です。日頃アパートの室内を見る機会のない近隣の方にも内覧いただき、建物にも親しみを持ってもらえたらと思いました」と澤藤さんはその意図について語る。

父が建てた貸家を570万弱でリノベ。1年入居待ちの物件に

話は前後するが、澤藤さんの父から承継した経年物件はリノベーションの末、現在も保有する。貸家は柱だけを残してスケルトンにし、大人の秘密基地のようなあか抜けた空間に造り変えた。

澤藤さんと同年代らの職人がチームを組んでアイディアを出し合い、分離発注して完成させた。

築48年貸家、改修前
築48年貸家、改修前
1階は土間を中心にし、業務用のキッチンを採用。浴室はユニットバスを使用せず、壁には外壁材を使用し、置床式の丸みを帯びたバスタブを設置。「遊び心」を詰め込んだ
1階のリビング(左)、2階寝室のウォークインクローゼットはエイジング加工した木材で囲った(右)

リノベーションにかかった費用は570万円弱。改修後は3万5000円アップの7万5000円で賃貸中だ。

物件写真を見て別の貸家のリノベーションの完成を1年も待って入居した人もいるそうだ。快適な間取りに尖ったデザインを取り入れ、入居の途切れない物件となっている。

専業大家になって以降、新築、既存物件のリノベーション、購入した区分マンションの再販などの新機軸を打ち出してきた澤藤さん。今後取り組みたいのは健康に配慮した「高断熱と高気密」と「高遮音性」のアパートだと話す。

「年間2万人近くの方がヒートショックで亡くなっていると聞きます。賃貸住宅でも住宅の基本性能を上げ、雪国でも一日の室内温度が急激に変化しない物件であったり、思いっきり楽器演奏をしたり、音量を気にせずホームシアターで映画の鑑賞ができる物件づくりに取り組んでみたいと思っています」

澤藤さんは専業大家として20年弱培った経験を活かし、2019年に友人と共同で不動産管理・仲介を行う(株)Asobo不動産を立ち上げている。

「大家業はチーム戦です。大家が戦える羊になる事は大事ですが、不動産会社は羊を守る番犬の役割も担います。地域の舵取り役となって入居者や地域の人、職人さんや他の大家さんを巻き込んでワクワクする賃貸住宅を広げていきたいです」と語った。

築37年の区分マンションを購入し、約400万円かけてリノベーションした室内。同世代の職人とチームを組んで実現した。「大家は周りの仲間の仕事を作るのも仕事だと思っています。構成メンバーの得手な分野を最大化できる機会の創出は大切だと考えます」(澤藤さん)

執筆:スドウミキ(すどうみき)

スドウミキ

■ 主な経歴

出版業界で20年勤務。不動産分野を専門とする雑誌での取材・編集をきっかけにサラリーマン大家の夫と出会い結婚。2022年宅地建物取引士の資格を取得。夫の勧めで法人を設立し、築古アパート1棟を購入する。1歳の子どもを持つ一児の母。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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